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殉教 (新潮文庫)

殉教 (新潮文庫)

殉教 (新潮文庫)

作家
三島由紀夫
出版社
新潮社
発売日
2004-07-01
ISBN
9784101050317
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殉教 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

三島の自選による第三短編集。一流の批評家でもあった三島だけあって、自分の作品に対する審美眼も鈍ることはない。9つの短編からなる作品集のタイトルには『殉教』ではなく、『三熊野詣』こそが選ばれるべきであった。何故なら、貴種流離が作品群を貫流するキー・コードだからである。「三熊野詣」は解説を待つまでもなく、折口信夫をモデルにしているが、そもそも貴種流離は彼の提唱した概念であり、巻頭に置かれた「軽王子と衣通姫」以下、何重にも貴種流離を輻輳しつつ物語を織りなしていくのである。篇中ではこの2作と「獅子」が白眉か。

2014/11/17

優希

死の直前に編まれた短編集ということもあり、三島文学の軸を成すテーマが貫かれている印象です。ロマネスクと日常の世界を時代に反する主人公で描くことで、貴種流離譚的な雰囲気から、異種的孤立の追求がなされているように思いました。若さの中にありながらも、見るべきものと考えるべき事柄が尽きてしまったような気がしてなりません。死と美に魅せられた世界が広がっている空気が象徴する憧憬を感じました。

2016/10/21

Gotoran

”死の直前に編まれた著者自選の第三短篇集”と云う9作品を収録。少年の子供から大人へと成長していく精神の軌跡と倒錯した性に絡む肉体的嗜虐の世界を描いた、特に、抑圧され暗喩に塗られた表現が官能的な表題作『殉教』。他幾つかを以下に。貴種流離譚の「軽王子と衣通姫」。現代的貴種流離譚で生き神としての生身の「スタア」。没落華族の話でおどろおどろしい美しさ漂う「獅子」。老人の異類で悲しくも強い信頼関係が印象に残った「三熊野詣」。異類がテーマで精神の脆さと儚さが印象に残った不可思議で幻想的な作品が多かった。

2021/07/11

けぴ

初期の頃と思われる作品は読みにくいが、後期の頃と思われる作品は読みやすい。印象に残ったのは『三熊野詣』。主人公の60歳の国文科の教授の男性が自宅に住まわせているお手伝いのような存在の常子を伴って熊野詣をする。香、代、子の一文字ずつを記した櫛を三箇所の熊野神社の然るべき場所に順々に埋めていく。教授の若かりし頃に熱愛するが周囲の反対で一緒になれず、その後亡くなったのが香代子であると明かされる。しかし本当のことなのか、教授の作り話なのか判然としない。今回の教授の行動の証人として常子は同伴させられたと明かされる。

2022/01/15

優希

再読です。死の直前に編まれた短編集というこよもあり、三島文学の軸となるテーマのロマネスクと日常が貫かれていました。時代に反する主人公で描くことで貴種流離や異類の孤立の意味の追求をしているように見えました。死と美に魅せられている想いの象徴する憧憬を感じずにはいられません。

2023/12/02

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