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熱帯樹 (新潮文庫 み 3-36)

熱帯樹 (新潮文庫 み 3-36)

熱帯樹 (新潮文庫 み 3-36)

作家
三島由紀夫
出版社
新潮社
発売日
1986-02-01
ISBN
9784101050362
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熱帯樹 (新潮文庫 み 3-36) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

三島由紀夫の30代前半に初演された、今ではややマイナーな戯曲3篇を収録。『白蟻の巣』は、幕切れが幾分もの足りない気はするものの、いずれも構成の妙と、緊張感が途切れることなく持続する、実に濃密なお芝居だ。散文作品では華麗な情景を描き出す三島だが、こうした戯曲では登場人物のセリフだけで物語世界を構築していくのであり、また別種の才能や工夫が必要だろう。そして、戯曲を読むと、三島の真骨頂はむしろこちらにこそあるのではないかとさえ思えるのだ。表題作の『熱帯樹』で描かれる兄妹の近親相姦の情念の表出は、とりわけ見事だ。

2012/10/21

Gotoran

三島の戯曲『熱帯樹』「薔薇と海賊」「白蟻の巣」の三篇を収録。表題作品について、以下に。莫大な財産を獲得するために夫を息子に殺害させることを企む妻。その計画を知った娘が愛する兄に母親を殺害させようと‥‥。父性愛や母性愛の欠如から愛と憎しみが交錯する親子・家族関係の崩壊や人間性の奥深さが描かれていた。読み応え充分だった。

2021/10/01

優希

戯曲集です。ギリシャ的で芳醇な空気を感じました。兄妹相姦からの心中、童話的恋愛、愛憎姦通劇といった三島文学の軸を成す事柄が全ての作品に貫かれており、悪徳の美しさがあるような気がしました。

2023/12/04

まめこ

★★★★★饐えた臭いを撒き散らす戯曲3編。息子を煽動し夫の殺害を企む律子、息子が向ける妻への愛に嫉妬する恵三郎、母と妹の肉欲に惑う勇、兄の愛を利用し母の殺害をねだる郁子。病みついた郁子の妄想かと思いきや!しかしよくこんな皮肉な名前をつけたものだ(笑)。純潔童話作家と白痴の青年による夢のない愛「薔薇と海賊」、雇い主夫婦と運転手夫婦の空虚な姦通「白蟻の巣」。どれもシュールで痛々しい結末が最高

2022/04/17

双海(ふたみ)

表題作「熱帯樹」が好き。兄妹相姦から心中へ・・・。「熱帯樹」は澁澤龍彦がエッセイ:「インセスト、わがユートピア」の中で近親相姦がひとつのユートピアであるという論の一例として提示しいる。タブーと云うことを考えてみると、私たちはつねに望ましいものを己に禁ずるのである。つまり、近親相姦とはそのような性質のものである。

2014/07/01

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