サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)
サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫) / 感想・レビュー
Gotoran
『サド侯爵夫人』:サド夫人は貞淑をその母モントルィュ夫人は法・社会・道徳、シミアーヌ夫人は神、サン・フォン夫人は肉欲、サド夫人の妹アンヌは無邪気さと無節操、召使シャルロットは民衆を、夫々、代表していると。サド侯爵に貞淑を尽くすとはどういうことか、最後にどう思われていたかという三島の解釈が興味深かった。『わが友ヒットラー』:一夜にして右、左の両方を切捨て中道を行くと民衆に思わせ独裁体制を築いていったヒットラーの政治手腕とその苦悩を描く。女性ばかり前者に対して男性ばかりの後者、対を成すと巻末自作解題にあり。
2021/03/21
kei
『サド侯爵の生涯』澁澤龍彦『アドルフ・ヒットラー』アラン・ブロックから着想を得て書かれた三島が「一対の作品」と言うように見事な対になっている作品。それぞれの作品のサド侯爵夫人(ルネ)とレームが自分の信条を譲ることなくわが道を進んでいくあたりは内容は全く異なりますがジッドの『狭き門』を思い出しました。ぽんぽんと会話のみのやり取りが続く戯曲を読むのは苦手なんですが、この二作品は一人の口上が長く読みやすかったです。『わが友ヒットラー』で扱われているレーム事件を今回初めて知りました💦まだまだ不勉強です。
2021/01/25
sasara
三島由紀夫戯曲初読み。暴力的な性行為サディズムはマルキドサド侯爵由来、この恐ろしく残忍な実在した人物から着想し関わりある女性だけ6人で演じる「サド侯爵夫人」1934年ナチスヒットラーが党内極右勢力、極左勢力を粛清し中道路線へ進むレーム事件を男性だけ4人で演じる。演者に頼らない三島由紀夫戯曲は凄い。
2021/02/24
ブラックジャケット
サド侯爵という怪物的なスケールの夫を持ったルネ夫人の貞淑さを中心に、母親モントルイユ夫人の道徳性、奔放なサン・フォン伯爵夫人の肉欲、シミアーヌ男爵夫人の神、妹アンヌは無邪気、家政婦シャルロットは民衆をそれぞれ象徴する。この六人の女性の葛藤が眼目。ヒトラーを友と信じる突撃隊のレーム。ナチス左派の社会主義者シュトラッサー、死の商人のクルップという政治的立ち位置の異なる人物の葛藤を描き、極右と極左を同時に粛正するヒトラーの冷徹さを描いた。作者も女芝居と男芝居の好一対と評している。長セリフの役者さん、ご苦労様。
2023/11/25
Kepeta
三島由紀夫の戯曲2編、どちらも面白かったです。サド侯爵夫人、対象が夫であれ神であれ形而上の絶対的存在に奉仕したい欲と解釈しました。現世の生身の存在に仮託して実は彼岸の存在を追い求めるのはいつもの三島節。わが友ヒットラー、第2幕のシュトラッサーの台詞回しは声に出して読みたい迫力でした。後書きにもありましたが、両編とも会話劇というよりさらに研ぎ澄まされたセリフ劇なので、実際に舞台を見るより戯曲として「読む」方が没入しやすいかもしれません。でも舞台でやってたら絶対観たいなあ。
2022/01/11
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