絹と明察 (新潮文庫 み 3-37)
絹と明察 (新潮文庫 み 3-37) / 感想・レビュー
優希
会社、経営、家族について考えさせられます。駒沢自ら父親、従業員を子とする独特の経営哲学に岡野が興味を抱くのもわかりました。元芸者を送り込み駒沢と会社の動向を知ろうとしたのも政財界に通じるからでしょうね。対立する2人の激突と新たな時代が動いているのを見たようでした。
2021/07/17
けぴ
滋賀県彦根市を舞台にする、ワンマン社長vs労働者の企業小説。社長の駒沢は昭和の頃の中小企業に良くあるタイプ。社員を家族として愛する。しかし労働者からの反乱で、待遇を改善するように仕向けられる。岡野が駒沢のもとに送り込んだ芸者あがりの菊乃が、臨終間近の駒沢に尽くすシーンが良かった。
2021/08/07
優希
再読です。会社とは、経営とは、家族とは。対立する2者の激突から新たな時代が見えてくるようでした。滑稽で辛辣な社会小説だと思います。企業を通じて日本と日本人の問題を描きたかったのでしょう。
2023/10/25
コージー
★★★★☆巨大紡績会社を築き上げた駒沢善次郎の人生の末路を描いた作品。戦後、押し寄せてきた西欧文明の波の中、時代錯誤の家父長的な経営手法で名を挙げた駒沢善次郎。それを面白くないとする西欧哲学の知識人岡野による謀略。身を粉にして働いていた若者大槻によるストライキ。それを静観する元芸者の菊乃。非常に個性的な登場人物がこの作品の味付けとなっている。特に社員を我が子のように、健気にそして厳しく接する駒沢の揺るぎない姿勢は戦国武将そのもの。この裸の王様的な駒沢がどのような道を辿っていくのかは見どころである。
2022/12/08
ホシ
独善的で日本旧来の経営方式で財を成した駒沢。財政界にも繋がりを持つ岡野は駒沢に興味を持つ。元芸者の菊野を社員寮の寮母として間諜に送る。会社では労働争議が勃発。争議のリーダー·大月と駒沢が対立するが…。▽1950年代頃の話。岡野や大槻の登場によって日本旧来の経営は没落。新しい時代の到来を予見させ物語は終わりますが、それはまた'格差社会'といった言葉に表されるように新たな沼の深みへと我々が歩みを進める暁鐘でもありました。三島はこれを見抜いていたんですかね。
2021/06/27
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