愛の矢車草 (新潮文庫 は 15-1)
愛の矢車草 (新潮文庫 は 15-1) / 感想・レビュー
A.T
愛のアンソロジー。4作それぞれ奇跡なのか魔法なのかが、ささくれたわたしの心を和ませてくれた。どの愛も素敵だけど…イチオシは「愛の牡丹雪」かな。とてもとても優しく、触れあってゆくシーンの重なりが降りつもる牡丹雪のようで。レズビアンの恋物語なんだけど、ちょっとエロもあるんだけど、傷つけあわない優しさにキュンとします。ま、どの「愛」もちょっと変わってる難しい人間関係なんだけど、愛にはそれが越えられるっていう素敵な話です。
2024/05/10
阿部義彦
多分今は品切れで重版未定だと思います。古書市で手に入れました。『帰ってきた橋本治展』が神奈川で開かれて再注目されている様で実に喜ばしいです。昭和62年発行の本文庫。様々な愛の形の物語。今のLGBTを先取りし過ぎていて、驚きを隠せません。全4編。前半2編は『小説現代』に掲載された軽いジョブの物語、後半2編が書き下ろしで、レズビアンカップルの、そしてラストは、若くして(小六)父親になってしまった高校生の変容する家庭劇。各編に、高野文子、しりあがり寿、奥村靫正、吉田秋生のオリジナル挿画の贅沢さ。
2024/04/16
そうたそ
★★★★☆ 追悼の意味も込めて読書。橋本治さんの作品って意外と読んでいないなあと思いつつ。本書には一風変わった愛を描いた作品が四篇収められている。昭和を感じさせる古さはあるものの、それでもやはり面白い。中でも出色の出来であるのは、「愛の牡丹雪」「愛の矢車草」だろう。前者はレズビアンのトラック運転手と、普通の主婦との愛が描かれる。どこか儚く切ないようなストーリーがお見事。後者はいつの間にか一児の父親となっていた小学生が描かれる。戸惑いからやがて父親としての決意するまでを描くまでの展開がお見事。
2019/02/23
植田 和昭
表題「愛の矢車草」が一番の出来だと思いますが、愛の狩人もいい味だしてます。「昭和の香りが」という意見が多いですが、いつの時代にも愛には、共通した要素があるからこそ読み継がれていくものだと思います。愛とは合理的説明のつかない不思議なものではないでしょうか。橋本さんの他の著書も読んでみたいです。
2019/05/28
hirayama46
下着泥棒や小学生の父親など、一筋縄ではいかない人々の愛を描いたラブストーリー集。橋本治を読むのはだいぶ久しぶりですが、これはものすごく面白かったですね……。ポストモダンっぽい雰囲気だけど、その分類に当てはまるのかどうかはよくわかりません。アヴァンギャルドでありつつも繊細でセンチメンタルなところがあり、たいへん心に響く小説が揃っていました。これくらい琴線ど真ん中な小説を読めるのは歓びというしかありません。
2021/07/05
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