草薙の剣 (新潮文庫)
草薙の剣 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ベイマックス
冒頭に10歳づつ違う6人の登場人物が発表される。さらに、6人の両親の生い立ちから語られる。人物が変わるごとに、関東大震災以前頃からの時代背景と歴史的事件が行ったり来たりで語られる。少し混乱する。そして、この小説は何なのだろう?大正・昭和・平成の戦中戦後の統括なのか?エピローグの最後、『「自分はなぜこんなところにいるのだろう?自分のいる、この暗い所は何なんだろう?」と、改めて思った。』と締めくくられている。作者も含めて多くの現代日本人が抱えている思いなのだろう。◎また、どうしてこの題名なのだろう?
2022/02/27
武井 康則
「二十世紀」を書いた著者が、流れる現代史を書きたかったのだろう。10年ごとの6家族で戦中から平成までを描く。その家族に接点はない。事件にも直接かかわらない。6つの短編でなく同時に描くため、時には読みにくくなる。注目すべきは解説。末木文美士は作品の構成から他の評論評価まで引用しすばらしい解説にしている。その解説で本書を失敗作だという。確かに特に最終章など、無責任としか思えないが、力作であり、無駄な作とは思えない。文学的には失敗でも、あって良い作品だ。
2022/05/14
shouyi.
舞台は現代、主人公は10歳ちがいの男6人。彼らには何の接点もない。そして最後までまったく関わる事も無い。語られるのは、彼等と彼等の両親、或いは祖父母も含めた3代の歴史だ。彼らの個人史が社会の流れの中で語られる。別に歴史に名を残すでも無くどこにでもあるような生活との格闘。そして死んでいく。6人全ての歴史が刻まれるが、そのうちだれがだれなのか区別がつかなくなった。改めて橋本治という人は小説家だったんだなあとその力量を感じた。本当に残念でならない。
2021/02/09
なをみん
自分より少し先に生まれた知ってる人の知らない時代の日常感覚をドキドキしながら読んだ。ああ、あの時代の父はこんなかんじで家庭をつくったのか。あの時代の母の世界はこんな感じだったのか。自分の通ってきた時代のリアルで普通の話もドキドキして読んだ。数時間を読書で過ごして読み終えて人生経験を数頁分だけど積んだ気になった。彼の本は小説以外で読むことが多いけど、やっぱり橋本治らしいなあ凄いなあと思った。
2022/10/24
まりこ
様々な年代の人たち。孤独さがありハッピーな話はなく、淡々と進む。昭和から平成の時事が絡み、どんな時代だったか掴む。曾祖父母から今の若者までと私はどの時代の人とも繋がっている。草薙の剣で辺りの草を薙ぎ払い、集めた草に火を点けた。草薙の剣より火打ち石の方が重要だと作者はいう。大太刀を振るって敵をかわすよりも、迎え撃つことの大事を。その向火は有効だったのか?
2022/06/09
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