夜明け前 (第2部 上) (新潮文庫)
夜明け前 (第2部 上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
慶喜による大政奉還がなされたのが慶応3(1867)年10月。明治への改元と東京への遷都が翌年の9月であった。その間の約1年は、各藩の武士たちはもちろんのこと、農民から庶民にいたるまでがいわば政治の空白期を経験することになった。水戸藩も会津藩も尾張藩までもがその内部で揺れに揺れていたのである。半蔵たち東山道の者たちもまた時代の運命に翻弄される。それまでの価値観の瓦解ということでは、あるいは第2次大戦の敗戦時よりも大きかったかもしれない。誰にも指針の求めようがなかったのである。
2023/11/22
のぶ
第二部に入って、冒頭の100ページ程は当時の世情の説明に費やされ、本筋の進展が全くないので退屈だった。その後本筋に戻り元号が慶応に変わるが、ストーリーはあまり進まず、明治は中々訪れない。ここでタイトルが“夜明け前”だったと改めて認識した。大政奉還までの記載が続いた後で、時代はやっと明治に入った。江戸は東京と改められて都が移された。その先はあらゆる物が新しく造り替えられる中で、半蔵は新政府や村民の為に奔走する毎日が続いた。何かケチを付けたようだが、内容は面白く最終巻に向けどんな展開が待っているか気になる。
2022/05/18
NAO
第二部上巻の前半は、大政奉還、鳥羽伏見の戦いと、歴史物語のよう。既存の制度が崩壊していく中で、新しい世の中に期待する半蔵と周囲の人々との考え方の違いが次第に明らかになっていき、距離が開いていく。
2020/03/18
優希
鳥羽伏見の戦いが勃発し、官軍と幕府軍の激闘の末に江戸は東京へと改められます。1つの時代が終わったのだなと思わずにはいられません。あらゆるものが新しくなる中で、新政府はどう動いていくのか興味を持ちました。
2019/01/10
aika
取り残されたまま、ひとつの時代が終わり、新たな時代が走り出すことの侘しさを感じずにはいられませんでした。これまで凶作などたくさんの危機を半蔵と共に乗り越えてきた百姓が起こした一揆に衝撃を受ける半蔵。これまで搾取され続けてきた彼らが真に求めていたものは維新ではなく、平穏な日常と圧政からの解放であり、時代や身分制度が表面上は変われど下々に生きる者の日々の苦悩は変わらない、むしろその深刻さを淡々とした描写が際立たせています。かつて木曽路を賑わせた武士の行列の途絶えが、時代の終焉をもの悲しく語っています。
2018/10/24
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