藤村詩集 (新潮文庫)
藤村詩集 (新潮文庫) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
美しく、しみじみとした情感が漂う詩集。定型を守っている詩が多いためだが、調べが整っているので、声に出して読むと心地良い。今では古典になった詩だが、発表された時は革新的だったことが解説を読んで分かった。自分の心情を率直に表現する詩は、島崎藤村が作り上げたのだ。この功績はもっと知られても良いと思う。世間体や家柄に囚われない個人の尊厳を文学の中で確立したのだ。抒情詩だけではなく、社会的な「農夫」や、対話という形式を取った斬新な「合唱」なども含まれていて、奥深い藤村の詩の世界を知ることができる1冊。
2016/10/28
扉のこちら側
2016年336冊め。10日程かけて少しずつ読んだ。古文や漢文の素養がないのでなかなか背景を知ることは難しいが、五七調や七五調の言葉の美しさを味わう。そんなイメージはなかったけれど、結構恋の詩が多いようだ。
2016/05/17
ころこ
この時代の詩は文語調で、新体詩と呼ばれているはずだ。『破戒』に出てくる一説が藤村の詩に近く、後期の『夜明け前』には半蔵のつくった和歌は書かれているものの、その様な調子の文章は無い。後期に詩的な調子が消えた理由は、言文一致が定着したからではないか。逆にいえば、言文一致が定着していない時に、自由で新しいことを表現したいが、言文一致という形式が整わない端境期に生まれたのが藤村はじめとした新体詩だったのではないか。
2023/05/04
双海(ふたみ)
登録忘れ。再読、音読しました。
2015/03/28
瓜坊
『若菜集』読んでいるとなんだか辛くなる。青春の恋の甘い酸い、そんな情が普遍的なものかどうか知らないが、ぐっとひきつけられて定型に心を刻み掘られるようで、そう考えると解りやすい言葉とリズム、むしろこの形式の絶対的な強さが一見すると普遍的な感情、らしきものを呼び起こしているんじゃないか。若いから辛いのか、若さに拘るから辛いのか、もう若くないことに目を逸らしているから辛いのか、そもそも若さなんて最初から持ち合わせていないから辛いのか、だんだん『若菜集』から離れたくなるけれど、いつか親しめるのか。たまに読むけど。
2018/04/16
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