幸福者 (新潮文庫 む 1-7)
幸福者 (新潮文庫 む 1-7) / 感想・レビュー
takaichiro
避暑地の猫で人間の悪を存分に浴びた影響か寝起きが悪く、今日は対局にある白樺派の完成形とも言える本作を手に取る。師が語る人間の理想像。神聖な宗教経典を読み進める様に心が洗われる。俗世の毎日を生き延びるのに理想ばかりを実現できる訳ではないが、理想を持ち続けたいと思う気持ちの大切さを強く感じた。大正八年の作。1世紀も前に書かれた文章に心動かされる気持ち良さ。戦後追い求めた理想主義だが、影に潜む嘘くささへの反発からか、世界情勢は負の騒めきが強くなっている。大脳が映す高い理想。その実現を目指す社会の回復を切に願う。
2020/01/23
双海(ふたみ)
大正八年の作です。ということは、武者小路が日向の「新しき村」を始めて二年目、ということになりますね。ちょうど研究テーマと重なるので気になりました。
2014/06/07
冬見
はじめは説教臭さを感じて随分読みにくいなあと思っていたが、「師」の過去に触れられた以降はするすると読めるようになった。「説教」ではないことが理解せられたからではないかなと思う。理想論だ。けれどそれだけで終わらせてはならないなと思う。27段でなぜだか涙ぐんでしまって、今でも理由はよく分からない。
2017/12/08
もっひぃ
『幸福者』と『土地』の二本立て。『幸福者』は論語と聖書を合わせて2で割ったような印象。師の思想は理想だが現在の自分とはかけ離れすぎてそれを実践するには不可能だと思った。加藤周一が「宗教的愛とは禁欲が変形を強いた性欲の表現である」とどこかで言っていた。その言葉が邪魔して師の有難い教えに素直に耳を傾けることが出来なかった。ひどく厭世的な時に読めば心に響きそうな本だった。
2017/03/18
文也
理想主義の極みというか、これぞ白樺派というか、論語とか聖書でも読んでるような気分になる一冊。内容も主人公が「師」についての逸話を語るという論語っぽい形式で構成されているが、「師」は終始超然とした人物というわけではなく、必死に自らを律しつつもちらほらと人間臭さを覗かせるのがこの本が小説として成り立ってる一因かなあ。漱石の「こころ」ではないけど、「師」の説教ではなく、独白って感じのが強いのよね。
2018/08/16
感想・レビューをもっと見る