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浮雲 (新潮文庫)

浮雲 (新潮文庫)

浮雲 (新潮文庫)

作家
林芙美子
出版社
新潮社
発売日
1953-04-07
ISBN
9784101061030
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浮雲 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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kawa

NHK「朗読」35回が終り、後半は来年とか。登場人物の行く末が気になり、放送を待ち切れずの文庫本。戦中~後にかけての道ならぬ男女の愛憎劇、舞台は安南(ベトナム)、東京、伊香保、屋久島と展開。人間の弱さ、しぶとさ、身勝手さのオンパレードで馬鹿馬鹿しいのだが、理屈で御しきれないのが人の性の悲しいところ。政治、戦争、男女の営み「何時までも同じ事の繰り返しで始まり、終る……。何が何だか悟りのないままに、人間は社会という枠のなかで、犇めき(ひしめき)あっては、生死を繰りかえしてる」(212頁)いつの世も変わらん。

2019/09/29

るい

戦後の絶望に生きる理由も見失うほどの哀しさを耐えるには、美しく幸福だったときの思い出に縋るより他になく、去来する感情のうねりは瞬きする間に色を変えてしまう不安定さ。 10年ぶりくらいの再読は印象が変わっていて、強欲で強引なゆき子を鬱陶しく思うより富岡のクズさの極みは現代にも通ずるものがあるな、年を取ったぶん嫌悪感が増してしまったのでした。

2021/09/27

にゃおんある

内地と外地。女と男。戦争と戦後。その隔たりに交錯する在野の人間模様は、泥臭くうす汚れている。無量のはかない浮雲とは対極的。捕まえることも根を張ることもできない飄々とした身の振り方は、形象となり表象となって、やがて心象へと落ちてゆく。他愛なさ、やるせなさ、けだるさがコントラバスの響きを描きながら底へ沈むのです。小気味よい華麗な人生のストーリーに飽きてしまったら、こういう小説がいいと思う。形振りかまわず生きた愚かな市井の人ほど、尊敬に能う人はいないと確信しました。どんな生き様だって結構毛だらけです。

2018/05/21

シュラフ

女の強さに感心するとともに、男のふがいなさに苦笑。富岡にとってゆき子は、おそらく仏印では可愛らしい女、焦土となった東京ではしつこく付きまとうややこしい女、そして最後の屋久島では自分への一途な愛を貫いたいじらしい女、ということだろう。敗戦による極限状況下といえどもゆき子の生きざまは自由奔放すぎるのだが、すべては富岡への愛でありいやらしさは感じない。一方の富岡はゆき子にふりまわされている。いく人かの女と懇ろになったもののゆき子が自分に一番つくしてくれたのだと気づく。あちこちふらふら、男の心は浮雲で如し。

2016/01/05

サンタマリア

移ろう世情。揺れる慕情。想いは簡単に変わって、また戻りかけて、それでも以前とは大分違った地点にいる。そういうのがささやかなものだから、ずっと胸にしまっておきたいんだけど、僕の体温で溶けてしまう。少しぬれて名残る。 職員旅行で屋久島に行くからっていう阿呆な理由で手に取ったけど、読んでよかった。

2024/10/01

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