あすなろ物語 (新潮文庫)
あすなろ物語 (新潮文庫) / 感想・レビュー
のっち♬
タイトルは『あすは檜になろうと念願しながら、ついに檜になれないというあすなろの説話』に由来。それぞれの章で主人公の心を揺さぶる魅力的な女性が登場するが、交わされるやりとりに俗っぽさがなく、清純さをとどめているのが著者らしいところ。大学生や新聞記者になると、いよいよ自伝的小説にはない寂寥感を伴った活気が出てくる。中でも華やかな未亡人信子や、野生的で逞しい熊さん夫婦の存在感は圧倒的。「明日は何ものかになろうというあすなろたち」の悲しさや美しさ、いじらしさはいつの時代も著者の人間愛の支柱になっていたのだろう。
2021/02/20
SJW
以前読んだのは中学3年生の冬休み。高校受験の直前に読書をしていたことに今更ながら唖然とする。物語は鮎太が少年期から壮年期までを6章に分けて、井上靖の自叙伝が綴られている。鮎太が小学生の時に大学生から教えられた「克己」に自分も気に入り、その後、自分が大学生ぐらいまで座右の銘としていたことを思い出した。話のテーマは明日は檜(ひのき)になろうとするが、永遠に檜になれない翌檜(あすなろう)。初めて読んだ時、自分を律し研鑽を積んでいく話と思ったが、徐々に鮎太が堕落していく姿にがっかりした覚えがある。自分もこのような
2018/01/24
遥かなる想い
中学時代に読んだはずのこの本の内容を実はあまりよく覚えていない。「あすは檜になろう、あすは檜になろう」と思いつつ、でも結局檜になれない「あすなろ」が持つ哀しみのようなものが鮎太の人生と重なって私の思い出深い一冊になっている。
yoshida
井上靖さんの自伝的な作品。明日は檜になろうと生きるあすなろ達の物語。主人公の梶鮎太の少年時代から壮年期までを、6人の女性達と時代背景を絡めて描く。ほんの少しの運命の綾により、変わったかも知れない人生。後ろ髪を引かれながら、一気に読了しました。鮎太の大学時代の憧憬。新聞社に勤務した鮎太の憧憬との訣別と、幻のような邂逅。幼き日に会った少女との運命の綾。終戦から復興にかけての時代背景と、しなやかな猫のようなオシゲと鮎太の儚い関係。誰しもが鮎太の成長を自身に置き換え、様々に想いを馳せる事だろう。読み続けたい名作。
2017/01/01
ケイ
こういう話とは全く知らなかった。檜になりたくて明日こそは檜になろうとするのになれないあすなろの木。その木に例えながら、鮎太の少年から青年期〜終戦後までが描かれる。各話において、鮎太以外の人達の気持ちが想像しにくかった。どうも作者の半生記的な小説であるようだから、そのためかもしれない。
2017/07/05
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