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しろばんば (新潮文庫)

しろばんば (新潮文庫)

しろばんば (新潮文庫)

作家
井上靖
出版社
新潮社
発売日
1965-04-01
ISBN
9784101063126
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しろばんば (新潮文庫) / 感想・レビュー

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SJW

井上靖の小学1年生から6年生までの自伝小説。以前読んだのは中学3年生の時で高校入試が終わり卒業式までのんびり過ごした時でちょうど今ごろだった。当時はこの「しろばんば」にとても惹かれて井上靖の幼少期に思いを馳せていて、高校1年生の夏休みに友達を引き連れて伊豆の湯ヶ島の井上靖の生家や浄蓮の滝を見に行ったことを思い出した。今回、再読して感じたのは、テンポの早い小説に慣れてしまうと、一つ一つの描写や主人公の洪作の思いが細かく描写されていて、違和感を感じたが、徐々に井上靖の多感な幼少期の世界に入り込むことが

2018/03/05

yoshida

曾祖父の妾である、おぬい婆さんと二人で暮らす洪作。伊豆の湯ヶ島を舞台に洪作の幼少期の成長を描く。豊橋で暮らす両親と妹との隔絶感。近親者への純朴な思慕。現代よりも生と死が身近な時代だからこその、死への困惑。年の近い異性への感情の変遷。湯ヶ島や伊豆の風情を背景とし、洪作の幼年期から少年期への成長が瑞々しく描かれ読ませる。当然だが洪作が成長するにつれ、おぬい婆さんは老いてゆく。二人の関係の変遷を読者自身の経験と重ね、過ぎ去った日々を懐かしく思い出させる。少年は更に成長し新たな世界へ向かう。読み返したくなる作品。

2019/01/03

遥かなる想い

あすなろ物語の後、井上靖の本が読みたくて読んだ。主人公・伊上洪作という少年が歩む人生は、大正時代の伊豆で あり、今でははるか昔のことだが、そこに流れるものはなぜか懐かしく心が落ち着く・・ちなみに「しろばんば」とは 夕方に白い綿毛をつけて飛ぶ虫のことらしい。そんな風景をもう見ることができなくなった。

のっち♬

天城山麓の山村の土蔵で曾祖父の妾と暮らす少年洪作の成長を綴った自伝的小説。周囲の白眼視に耐えつつ彼に異常なまでの愛情を注ぐおぬい婆さんを筆頭に、数多くの登場人物が生き生きと描き出されており、彼の世界の広がりや感性の目覚めが鮮明に伝わってくる。虚飾や誇張のない淡々とした筆致は少年時代に立ち返ったかのような繊細さと瑞々しさをみせ、ユーモアも絶妙に散りばめられている。叔母と婆さんの病と死がハイライトで、仇敵関係を乗り越えて交わされる人々のさりげない優しさは心温まる。死に対する複雑な思いからも洪作の優しさを感じた

2020/11/08

扉のこちら側

2018年319冊め。2017年の大みそかに読友さんと再読しましょうとお約束した本にようやく着手である。伊豆半島の農村部を舞台に少年の成長を描いた著者の自伝的作品。小学校6年間を通しての物語であるが、おかしな話、人間はこうやって成長をしていくのかと感心させられた。前編の終盤のある人物の死と、後編で人間関係が多様化して目覚めていく成長の描き方が素晴らしい。大正時代の話なのでまだ60代のおぬい婆さんも今でいう90近い雰囲気だが、その微妙な立場と言動の描写がこの作品の肝になっている。

2018/07/14

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