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リツ子その愛・その死 (新潮文庫 た 5-5)

リツ子その愛・その死 (新潮文庫 た 5-5)

リツ子その愛・その死 (新潮文庫 た 5-5)

作家
檀一雄
出版社
新潮社
発売日
1993-02-01
ISBN
9784101064055
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リツ子その愛・その死 (新潮文庫 た 5-5) / 感想・レビュー

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カブトムシ

檀一雄の戦後の出世作となった、いわゆる「リツ子もの」の全編である。二冊本の長編小説として、昭和25年(1950年)に刊行された。主人公と若妻リツ子との瑞々しい交歓と日々の些細な生活上の感興とが、太平洋戦争末期の厳しい世相を背景にくっきりと描き出されている。戦争の悲惨と荒廃の中で一年を過ごし、帰国した時、妻リツ子の身体は結核にむしばまれていた。生死の発する根源に眼を向け、強烈な生の確立をみずみずしい文章で綴った愛の名作である。さらに代表作「火宅の人」があり作家を生業とする主人公桂の放恣な生き様を描いた作品。

a子

戦争でバタバタと死んでいく人々と病気でどんどん弱っていく妻を通して際立つ檀さんの生命力。どんな惨さもエゴも貧しさも 澄み渡る清流のような文章によって 偽りない正直さへと昇華されてゆくみたい。死にゆく者を看護する絶望の中で、きらきら弾けるような生に吸い寄せられてしまう人の、命のサガ。だって生きてるんだもん。その愛の儚い美しさ、その死の痛々しさ。ああ、リッちゃん…檀さんは気持ちのいい男だねぇ。

2020/05/23

しそゆかりうめこ

病い、貧しさ、姑の嫌味、太郎のあどけなさに救われる素直さや笑いに吹き飛ばされてあたたかみに包まれる病いで今日か明日の命であっても、夫婦の何気ない日常の中にあった様々な思い出でリツ子と秘めた笑いがあり、人とひとをつなぐささやかなしあわせを愛おしく思ったにんげんて結構いいなあって思えた本にも魂がある気がしてくる現実的につらいばかりなのに真っ暗闇ではなくてリツ子の純粋さや消えゆく美しさ、反対に静子のはつらつとした健康的な明るさや細やかさ。魅力がたくさんあって語りきれない。

2014/08/06

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