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武蔵野夫人 (新潮文庫)

武蔵野夫人 (新潮文庫)

武蔵野夫人 (新潮文庫)

作家
大岡昇平
出版社
新潮社
発売日
1953-06-09
ISBN
9784101065021
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武蔵野夫人 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

人妻道子と戦争帰りの従弟の勉との間に芽生えた愛を、武蔵野を舞台に描く長編。このように書くと何やら昼メロめくが、実際のところは昼メロから程遠い内容であり、男女間の恋愛の心理が突き放した視点で描かれる。男女のエゴとエゴのぶつかり合いを外科医のようなメスさばきで、たくみに解剖しているのはスリリングだが、そこまで意地悪く書くことはないのにと思うこともあった(苦笑)。人間たちは醜いが、武蔵野の自然は叙情的に美しく描かれており、名作『野火』との共通点を感じた。

2014/03/14

じいじ

初めて読む大岡昇平。代表作「野火」が読みたかったが、予行演習を兼ねて今作を読んでみた。いまも豊かな自然を残す武蔵野を舞台にした、人妻・道子と学徒出陣した戦場から帰ってきた青年との不倫の恋物語である。「夫は妻を愛撫する際、彼女の耳を噛む癖があった…」など、表現される濡場シーンは官能的ではあるが、奇抜さこそあれ決して淫靡さを感じさせない。男女の恋には、時代の古い新しいは関係ありません。じっくり腰を据えて読み返したい小説でした。

2022/08/07

佐島楓

フェミニズムの視点から見ると怒りだすひと多数な感じの物語だった。時代に対する批評や風刺のきいた小説だと思えば優れているし、おんなごころもよく捉えられているとは思うけれど、最後の展開が酷すぎる。でもこれが戦後直後の大多数の女性の在り方だったのだろう。

2018/01/17

冬見

貞淑で古風な武蔵野の人妻道子と、ビルマから復員してきた従弟の勉との間に芽生えた悲劇的な愛。道子の従兄大野とその妻富子、道子の夫秋山らの虚栄、姦通、欲望とが絡み合い、悲劇は加速する。◆大岡昇平の作品は本作が初めて。貞淑は罪なりや。恋は罪なりや。欲望は罪なりや。「彼女は不意に自分の周囲が、それぞれ役割を務めている人たちばかりで、充たされていると感じた。」という描写が、道子という人間をそのまま映しているようで切ない。全てが少しずつ取り返しのつかない方向へ進んで行くのを読者はただ呆然と見つめるしかない。

2020/05/25

ジョニジョニ

読み始めてすぐ、ずいぶん通俗的な小説だなーと驚いたけど、終戦後間もない時代の武蔵野を想像しながら読むと、たいした娯楽もなく、駐屯軍に怯えながら、日々の生活に退屈している人たちが見えてくる気がしました。端的にいってしまえば、二組の夫婦と、復員してきた若造の間男の話。これで性描写があればもう官能小説ですけど、唯一出てくる子供、九つの娘、雪子の視線が悲しい。「大人の間では子供はいつでもこうして犠牲にされる」というのは、幼年のころの著者の思いだったんじゃないかな、と感じました。

2023/03/19

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