フランドルの冬 (新潮文庫 か 7-1)
フランドルの冬 (新潮文庫 か 7-1) / 感想・レビュー
sabosashi
ヨーロッパというのは剥き出しの孤独というものを見せつける土地だと思う。 きれいごとなど、うわべのことにはあまりおかまいなく、むしろ人と人とのあいだは分かり合えないものなのだ、という認識がありそう。 それが精神病院ということになれば、患者はもちろんのこと、ケアする側においても、正常と狂気のぎりぎりの境を往き来する場合も出てくる。 そんな果てのような地区に日本人精神科医が配される。 ヨーロッパ人に似通った煩悶に苦しむ運命をあたえられる。 この小世界を、著者はじつに丹念に描き出す。
2019/04/20
かっこちゃん
加賀乙彦
2023/02/03
ヘブンリー
1章はフランスで精神科医として働くコバヤシを外側の視点から、そして2章から4章はコバヤシの視点から描かれている。日本語で書かれていても内省的で幻想的、思索的でかなり理屈っぽいが、この理屈っぽさがまたいい。フランス人でありながらそこからはみ出し、闇に向かう同僚クルトン、そしてニコルとの不毛な恋愛。クルトンとコバヤシに訪れた結末は、加賀が将来カトリックの洗礼を受けて救われたこととつながるのだろうか?非常に興味深く美しい小説だった。
2015/04/12
ホレイシア
題名からして暗いが、中身もその期待(?)を裏切らない。フランスの精神病院で働く日本人医師がみずからも正気を失っていく。こういうの好きなんだよねー。
2008/01/01
ソングライン
フランスに留学した精神科医コバヤシが経験する夏に始まり厳しい冬に終わる恋愛が中心に描かれます。自殺願望のある同僚や日本に永住するつもりの神父、同性愛で少年愛者の上司などが登場し、長編ですが興味深く最後まで読めました。
2016/08/17
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