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海霧 (新潮文庫 か 7-6)

海霧 (新潮文庫 か 7-6)

海霧 (新潮文庫 か 7-6)

作家
加賀乙彦
出版社
新潮社
発売日
1992-06-01
ISBN
9784101067063
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海霧 (新潮文庫 か 7-6) / 感想・レビュー

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おしゃべりメガネ

お気に入りさんのレビューにて気になり手にとった作品です。タイトルにも惹かれましたが、作品の舞台が北海道の道東となっており、釧路はもちろん根室、羅臼、別海など馴染んだ地名が多数出てくるトコにも惹かれました。決して明るい雰囲気の作風ではありませんでしたが、質の高い読書時間を過ごすコトができました。東京での生活が諸事情により、イヤになり何もか捨てて道東のとある町の精神病棟に勤務するコトになった心理療法士の主人公「牧子」の心理描写はもちろん、北海道道東ならではの自然描写が素晴らしく描かれており、うっとりしました。

2019/06/12

たぬ

☆4 加賀氏2冊目。なんとなくとっつきにくそうなイメージだったんだけど読み始めたらあっという間だった。ギャンブルも含め院長の主張は賛成し難いなあ。自分が患者だったとしても間違いを起こさないように専門家の目が光っているほうが安心できる。ドアに誹謗中傷の貼り紙をしたり食堂で席を移動なんてのは低レベルすぎて呆れるばかり。それにしても及川には「押してダメなら引いてみな」と言ってやりたい。ウザすぎ。

2021/03/27

しゅんしゅん

乱獲による自然環境の変化で重く海霧のように町を覆う漁業の不振、漁業組合の対立。北海道の東の果ての精神病院は理想を掲げた開放的な病棟だが、追い詰められた患者や家族の悲劇と共に、労働組合の内紛で歯車が狂っていく。産業の荒廃とすさんでいく人の心。思いやる心も疎外されて窮地に追い込まれる。育まれるかに思えた愛も、生きるための生活の中で実を結ばれずに拠り所になるには心許ない。三浦綾子にも言えるが、キリスト教の信仰と北海道の自然は相性がいい。自然を前にした人間の営為の悲しさ、身勝手な心の脆さ、それでも生きていく強さ。

2021/11/18

Take@磨穿鉄靴

素敵な作品に巡り会えた。加賀氏の作品は初めてだったが自然の描写が丁寧で贅沢な時間を味わえた。読者メーターに感想が上がってないのもなんだか真新しい雪に一番最初に飛び込むようで気持ちがいい。「海霧」としてのラストはあれで良かったのか気になるけどまた読みたいお気に入りの一冊が増えた。 ★★★★☆

2018/01/12

Hiro

つい先日「沈むフランシス」を読んだ時似たような設定の小説が他にもあると思い当たったのがこれ。主人公の年齢や仕事に多少の違いはあっても生きがいを求めて北の大地で新生活を始めるという設定は同じだ。だが印象は全く違う。記憶ではもっと明るい作品と思っていたがフランシスに比べるとかなり暗い、途中で読むのが辛くなるくらいの話だった。ただ結末ではどちらのヒロインにも明るい未来が暗示されていると読める。そして理想や夢や純粋さと現実や常識や俗っぽさとの対立を描いた上で救いが見出されるという点で本書の方が感銘が深い。

2019/01/15

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