宣告(上) (新潮文庫)
宣告(上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
遥かなる想い
死刑確定囚を描いた,その重さをあまり感じなかったのは、書く側に死刑確定囚に対するある種思いやりがあったからなのだろうか?いつ「お迎え」がくるのか怯えている、死刑の宣告をうけた楠本他家雄の描写も心なしか優しい。拘置所の医官で、若い精神医近木が著者の原型なのだろう。死刑執行を 言い渡された後の「いさぎよさ」も息を呑むほど、あざやかだった。
2010/07/04
こばまり
読んでいるのは上下巻から成る旧版だがレビューが賑やかなこちらで登録。
2018/02/07
gtn
実在した死刑囚がモデル。楠本他家雄はバーメッカ事件の正田昭、砂田市松はおせんころがし母子殺人事件の栗田源蔵、安藤修吉は鏡子ちゃん殺人事件の坂巻脩吉だろう。死と隣り合わせの死刑囚以外浮かび得ない哲学が随所にみられる。死より怖いのは、死刑以外に自分が人間であることを証明できないこと、悪人のまま死んで行くことだというのが他家雄の結論。彼の苦悩の凄まじさに言葉もない。
2023/11/01
風に吹かれて
ゼロ番囚の死刑囚たち、彼らが収容されている拘置所の精神科医をはじめとする職員たち、再審など死刑囚たちを支援しようと訪ねてくる人たち。拘置所内を様々な人々が行きかう。一口に死刑囚と言っても、それぞれが犯した罪は違う。職員一人ひとりの考え方、感じ方も違う。長い小説だからこそ、それぞれの人物に及ぶ筆の息の長さが、体臭までも感じさせられるような濃厚な世界を作りだしている。なぜ主人公は死刑囚となったのか、主人公が記した手記で明らかになるのだろう。中巻へ。
2017/12/08
るか
★★★☆☆死刑囚の精神科医であった加賀乙彦だからこそ書ける作品だと思う。死刑宣告を受けたゼロ番囚たちが収容される拘置所の中で飛び交う恐怖と孤独、自棄する様子が静かに語られるが、その迫力は凄まじく、真に迫っていた。次は中巻。
2017/01/01
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