田園の憂鬱 (新潮文庫)
田園の憂鬱 (新潮文庫) / 感想・レビュー
みっぴー
一組の夫婦と犬二匹が、都会に疲れたので田舎に引っ越してくる話です。安楽の地かと思いきや、やはりどこで暮らそうと隣近所とのいざこざは避けられず、絶えず周囲に煩わされる。どこへ行こうと心配事は減らない。元気になるどころか徐々に衰弱していく主人公。病んでるのか繊細なのか……日に日に追い詰められていく様子が、読んでいて苦しかったです。私はAm⚫zonが利用できる無人島に住みたい…(^_^;)
2017/07/17
やいっち
前回のブログ日記にあれこれ書いた。 やや、持ち上げすぎだったかな。方法的模索や、まして思想上の煩悶は皆無だし。過敏な感性をもて余している(私小説風な内向性に留まっている)だけなのか、もう少し読んで確かめてみる。 薔薇の憂鬱と題したほうがいいのではなんて、賢しらなことを書いてしまったが、副題に「病める薔薇」とあるではないか。なんて、不注意な吾輩。 ただ、読了してみて、過敏な感性をもて余している(私小説風な内向性に留まっている)だけなのでは、という懸念が当たっているという心証を抱いてしまった。
2018/12/14
ワッピー
とうに読んでおくべきだった本のひとつ。芸術の夢を追いながら、都会を逃れ郊外の農家に移住した主人公の内面吐露は読んでいてツラくなるほど繊細で、病的で、脆弱で、倦怠に満ちており、その合間に差し挟まれる2匹の犬や猫の活動、田園の描写はやや救いだが、夫の病に戦々恐々としている妻の様子は痛ましい。心理の不安定さ、幻聴・幻覚は文学的心理描写と言えるのかもしれないが、最期の「おお、薔薇、汝病めり!」は憂鬱どころか、大爆発!「西班牙犬の家」にも出てくるフラテに再会できたことは収穫ながら、何とも複雑な読後感でした。
2022/02/26
taraimo
思いの外、時間を費やし佇んでしまった作品。精神を病む主人公だが、庭の樹々が成す造形を額縁に見立て、そこに映る風景は、幻想なら空想力の豊かさを、現実なら観察力の鋭さを、忠実に描いた絵のようで魅せられる。ランプの周りを歩く虫の風情に浸り、またその虫が更に小さな虫を食べることに青ざめたり、些細な感動と落胆を繰り返す日々……手にした理想は永遠でなく、不安に苛まれるが、手入れをした植物が花を咲かせたり、犬の澄みきった目が主人に期待や信頼を寄せてくれる、そんな喜びに生きる意味を感じ模索する姿に共感し、また悩ましい。
2020/02/16
Tadashi Tanohata
たっぷりと「憂鬱」を堪能しました。詩人佐藤春夫の不朽の名作だが、我儘、倦怠、焦燥、幻覚、幻聴、模索(作中より拾う)から想像されたし。しかし、現代人の私が読むと、思っ切り憂鬱を感じているのは、間違いなく「彼の妻」と「二匹の飼い犬」でしょう。私ごとですが去年、続けざまにご両親を亡くされた古い友人のことが、読中脳裏にありました。そんなものなのでしょうか。
2018/01/14
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