去年の梅 (新潮文庫 た 15-9)
去年の梅 (新潮文庫 た 15-9) / 感想・レビュー
じいじ
8冊目の立原小説は好いです。二人の性格の違う人妻―外科医を夫にもつ千枝と、製薬会社社長夫人の亮子を中心に物語は展開します。経済的に恵まれた人妻が、どうして不倫の恋に走ってしまったのか…? 静かに潜行するように燃焼する一途な千枝の恋と、愛憎入り乱れる激しい涼子の恋が、丁寧に綴られています。相変わらず立原作品は、あたりの情景描写に絡めて、女の恋情描写が巧みで美しいです。この一冊でまた一歩、立原小説の魅力の深みにおちいったようです。
2018/08/17
びす男
「こうなってみると、男と女のどっちが悪かったのかわからなかった。二人はこうなるべくして結ばれたのだろう、としか考えられなかった」。サロンに出入りする男女たちの堕落と、その中で一線を画して愛し合う二人の姿が印象的。いずれも不倫なのに、何が違うのだろう。快楽に終始しない関係だったのが良かったのか…。初めて読んだ作家だったが、いい文章を書く人だ。
2017/07/14
みにょん
和製「グレート・ギャツビー」?
2019/11/30
読書三餘
男女が集うサロンでは当時の自由、軽薄さがよく表され、恋着と破局を兼ねるに好条件である。不倫が呵責の対象となりやすい今日では、フェミニストをヘンに刺激したり、禁書も同然の評価を受けたりするだろうが、ひたすら淫乱と詰るには惜しい美しさがある。しきりに出てくる豚足は俗悪の手軽な契機として、風間の縦横無尽な手口は、千枝を手に入れるために発揮された狡猾さとして読める。皮肉にも、周囲の恋愛関係に破綻が生じたときの無意識な相対化は、この一組の奇跡的に清潔さを保たせ、春のおとずれに誓う。この宣誓における賛否は別れようも。
2024/02/09
モモイロペリカン
立原の、場面を表現するときに使う言葉が好きです。京都の宿のシーンはとくに。立原の長編を読んだ直後だったので、さっと読めました。読みやすい。
2022/06/23
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