室生犀星詩集 (新潮文庫)
室生犀星詩集 (新潮文庫) / 感想・レビュー
匠
24冊以上もある詩集の中から福永氏が厳選した187篇。「抒情小曲集」では小さな生物から鳥や景色に切なさやほろ苦さと郷愁を、「愛の詩集」では惚れっぽいのにどこか自信なさげな繊細さを詠い、ページが進むにつれ段々と悲しげな雰囲気の詩が消えていったのが、とても印象に残った。さらに晩年近くなっていくと吹っ切れたような、「夜までは」など思わず声を出して笑ってしまうようなユーモアのある詩が幾つもあって、室生犀星氏のお人柄を感じさせて楽しめた。そんな中、個人的には「けふといふ日」「誰かをさがすために」がすごく共感できた。
2014/05/12
新地学@児童書病発動中
若いころの「ふるさとは遠くにありて思ふもの」(叙情)と最晩年の「男というものは みなさん ぶらんこ・ぶらんこお下げになり」(諧謔)の落差が非常に面白い。「生きて生き抜かなければならない」と自分に言い聞かせて、体当たりで生きた詩人の精華が一つ一つの詩の中に脈打っている。「幸福なんぞあるかないかも判らないが、生きて生き抜かなければならないことだけは確かだ」(『あさきよめ』より)
2013/04/02
masa@レビューお休み中
福永武彦編のこの本はよくまとまっている。さまざまな時代をまたいでいるにも関わらず、読み手に違和感を感じさせない。違和感を感じさせないどころか、はじめからこのために書かれた詩集なのではないかとすら思ってしまう。犀星の詩の中で印象に残るのは、幼子を亡くした後の悲嘆にくれた作品ではないだろうか。「忘春詩集」では、そんな犀星の深い悲しみ、死を受け入れることができない心の様子を描いたことばで埋めつくされている。作品を通して、こんなにも作家の人生を垣間見ることができる詩集というのは珍しいのではないだろうか…。
2013/09/28
かおりんご
金沢に住んでいたことがあるので、犀川も、片町も、立山も、そして室生犀星も知っていました。なのに、犀星の作品に向き合ったのは今回が初めて。動物詩集は児童文学のようなかわいらしさにあふれ、忘春詩集は我が子を失った悲しみを表現。どれを読んでも、同じ人が書いたとは思えない作品です。生い立ちを知るとなおさら、ここまで美しい日本語を紡ぎ出せるのが凄いなと、ただただ尊敬してしまいます。
2014/09/15
まさむ♪ね
何がそんなに悲しいのですか。何がそんなにあなたを寂しがらせるのですか。その心に澱のように溜まった黒い影の正体はいったい何なのですか。あなたは言う「きのふいらつしつてください」と、昨日、明日でなく昨日、未来でなく過去に来いとあなたは言う。やはり過去なのですね、そんなにもあなたを苦しめるのは。でも犀星さん、昨日へ行くにはどうしたらいいのでしょう、タイムマシンなんてものはないし、ドラえもんだっていないのですよ。わたしはあなたにお逢いしたいのです、お逢いしなければならないのです、「からだぢゆうが悲しい」あなたに。
2016/02/05
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