ぼんち (新潮文庫)
ぼんち (新潮文庫) / 感想・レビュー
mariya926
ぼんちとは、ぼんぼんとは違って帳尻の合った遊びをする人!女系家族の中で祖母のきのが実質足袋問屋の河内屋を支配していますが、孫の喜久治は女の世界を息苦しく思い、外に5人の妾を作ります。祖母のきのの支配が終わった時に、女遊びからも卒業しぼんちになった喜久治がこの後どうなったのかが気になりました。これでもかという程、女性のドロドロした世界について書かれています。「花のれん」「暖簾」に続き、大阪の船場の数百年の歴史がある家族のしきたりや商家同士の関係や芸者との関係は山崎豊子さんでないと読めない醍醐味だと思います。
2017/12/02
reo
作者はあとがきで「ぼんちの誕生は、船場という数百年の歴史を持った街を母胎にして、産み出されたものです。そこにある厳しい家族制度や、特殊な風俗、風習を一つひとつ掘り起こし、探り出していくことによって、ぼんちという、ひとつの人間像に触れることが出来ました」といっています。しかし何といいますか…、女遊びは体力も要りますし、財力もたんと掛かりまんな。嫁はんひとりでも持て余しているのにハァ…。「女系家族」と併せ読めば、一層興味が湧きます。
2017/03/11
スノーマン
あっけにとられるくらい見事な喜久治の『ぼんち』ぶり。今の時代にも、これぐらい大物の人いるのかな〜。次々と金と立場にモノを言わせて女を落として行く話といえばそれまで。でも話が魅力的なのは、その時代の船場の独特な文化や風習が興味深いのと、女と男という基本的な付き合い自体は今も昔も変わらないから。それにしても、きのと勢以のコンビがすっごく怖いわ〜。
2015/02/26
Galilei
船場の順慶町、長堀から北へ二筋の昆布の老舗の嬢(いと)さん、山崎豊子の初期作品の中でも、戦前の船場を懐かしむ旦那衆は、よう書いてくれたと。その生家から西へ、御堂筋、四つ橋筋を渡れば、大阪一の花街、新町。江戸の昔から吉原と並び賞された最高の花魁道中。船場の旦那は芸妓を妾に引いて、島之内界隈に囲い、遊びは此処までに止めておくのが慣わし。むろん公然の了承でした。ところが主人公はそれに飽き足らず、井原西鶴の世界。身代は潰さなかったものの、敗戦後は水商売や芸事以外は足袋など何方も。船場のピンとキリを堪能しました。
2020/01/19
James Hayashi
ぼんぼんでなくぼんちになれと言われた、大阪商人の息子。厳しい母と祖母に教えを受けながら、船場のしきたりを踏まえ女道楽を行う。商売を繁盛させながら5人の妾を世話していく足袋問屋の喜久治。そういう時代は過去のものであろうが、力強さや小粋さを感じた。戦中、軍部は宝石商に売り台帳を提出させ、誰が宝石を隠し持っているのかを調べ上げていたことに驚かされた。丁寧な下調べを感じた著者らしい作品。
2015/01/26
感想・レビューをもっと見る