花のれん (新潮文庫)
花のれん (新潮文庫) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
明治も終わりを告げ、幾度かの戦争で疲弊と変化を余儀なくされる日本の過渡期、昭和初期に『寄席』というお笑いを商いに、大阪の地で敏腕を発揮した凄い女性がいた!頼りない夫の恥ずかしい最期に膨大な借金だけが残り、降り掛かる幾多の困難を知恵と度胸で乗り越える。義理と情とど根性!彼女の行動指針は恩義で足を向けて眠れぬ感激を相手に残すほど人を大事にする事!効率化の真逆をいくように、常にブルーオーシャンを商いの足場に据え、見事に切り抜けてゆく必死に奮闘する女の生涯を見事に描く!山崎豊子先生に直木賞をもたらした傑作‼️🙇
2019/12/30
遥かなる想い
第39回(1958年)直木賞。 女の大阪商人 多加の生涯を描いた作品である。 大阪弁満載で、明治の大阪の風景が 心地よい。 吉本興業の創業者 吉本せいが モデルらしいが、 夫に 商売に 苦労しながら、懸命に生きる多加の 人生を情緒豊かに描く。
2018/10/01
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
山崎豊子さんの初期の作品であり、直木賞受賞作。朝ドラと同じく吉本興業の創業者吉本せいをモデルにした小説。山崎さんといえば「不毛地帯」「白い巨塔」「沈まぬ太陽」などなど骨太の社会派長編というイメージだが、こんなのも書いていたのですね。芸人道楽に走る甲斐性無しの夫と始めた小さな寄席を才覚と度胸で大阪一の寄席に築き上げていく。コテコテの浪速の商人の根性物語。明治、大正、昭和初期の激動の時代を駆け抜けていく主人公多加。やっぱりこういう作品は大阪弁が一番しっくりくる。★★★+
2018/03/21
のっち♬
寄席をはじめたが意思薄弱でぐうたらな夫に先立たれ、多加に残されたのは万とつく借金と幼い息子。「男がやって出来へんことも、女が形振かまわんとやったら出来ることもあると思いますねん」大阪商人の女のなりふり構わない芸人集めと金策にはじまり、資金作りから借金返済、経営拡大まで力強さに溢れた生涯。その繰り出される「ど根性」の数々は男勝りなほど逞しくて凄味がある一方で、「女というものは誰かに愛されているか、愛しているかでなければひたむきになって働けない」と悟る一面もあり、成功の裏の孤独感まで情緒豊かに描かれている。
2020/02/25
優希
強烈な印象を残す作品です。大阪の街を舞台に腕1本で見事に商売をやりのけた女性の物語というだけで凄いとしか言えません。借財を残して亡くなった夫に代わり、なりふりかまわぬ金儲けに走る多加の根性と心意気が痛快です。身を捨てたと言ってもいい力強さ。商売をするためにはここまで体を張らなければならないのかと思うと唸らされます。その生き様からは活力をもらえそうな感じでした。活気あふれる難波風情も伝わってきます。直木賞受賞も頷ける面白さです。
2016/06/01
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