華麗なる一族(下) (新潮文庫)
華麗なる一族(下) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェルナーの日記
“血は水よりも濃い”とか、“骨肉相食む”等、親子の確執はこれほど非情で悲惨な結果を生むのか。本書の初版は1973年で『金融ビッグバン』と称して金融界を揺るがす大手銀行の合併騒動が始まるのは、凡そ1996年~2001年度にかけてである。約20年前に著者は、結果的に見て予測していたことにある。おそるべき先見性をもった山崎豊子氏に脱帽。ちなみにモデルとなった銀行の変遷を見ると、三井住友銀行はわかしお銀行・さくら銀行・三井銀行・住友銀行と合併。りそな銀行は大和銀行・あさひ銀行(協和銀行・埼玉銀行)と合併している。
2016/05/18
mitei
財閥のような銀行家一族に翻弄される関係者の結末が描かれていた。しかし最後まで息苦しい話しだった。
2011/09/17
reo
山崎センセ『白い巨塔』を書き終わり『続・白い巨塔』を書き始めるきっかけとして「小説とはいえども、もっと社会的責任をもった結末にすべきであった」という意見があったからといっておられた。しかし今回『華麗なる一族』に於いては、万俵大介・綿貫の悪人グループが万俵鉄平・三雲の善人グループを完膚なきまで打ちのめすという結論とした。更に永田大蔵大臣・美馬中の大悪人グループが、その上前を撥ねようというのだから念が入っている。しかし、つらつら考えてみると世の中というものは概ねこのようなもので、不思議なこともない。名作です。
2017/04/21
優希
父親に銀行を倒産された鉄平はどんな想いを抱いたのでしょうか。三雲頭取を出し抜いた専務と大介の関係を知ってしまったのが原因で自分を追い詰めてしまったのでしょうか。その反面、新たな銀行再構成が始まっている。銀行という聖域で果てしない欲望が渦巻くドラマを見ていたようでした。怖いですね。
2022/06/15
つーこ
ふ〜〜っ。やっぱり山崎豊子らしいラストだった。いい人が残るのではなく権力や知力や洞察力の勝る人間だけが生き残るこの感じ。鉄平、阪神特殊鋼、大同銀行と自分にとっての目の上のたんこぶを一気に落し入れる方法を考えつく大介の千里眼に感心さえしたんだけど、そんな大介さえもを陥れようとする輩がいるわけで。そして、万俵家の崩壊は少し遅すぎた。寧子の自立心とか銀平の後悔とか何もかも。その家で生きていると、自分が歪んでいることには気づけないんだろう。無念の一言。
2010/07/18
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