二つの祖国 中巻 (新潮文庫 や 5-20)
二つの祖国 中巻 (新潮文庫 や 5-20) / 感想・レビュー
James Hayashi
中巻では太平洋戦争、フィリピンで劇的な兄弟の再会、広島への原爆投下と敗戦。そして東京裁判が描かれる。坦々と描写される歴史事項に賢治の苦悩が表れ生々しい。特に東京裁判でモニターとして同時通訳を行う心痛は並大抵ではなかったであろう。言葉以外に文化も異なり、裁判への影響も異なってくるという大きなプレッシャー。そのような心象も含め下調べが緻密であると感じる。賢治のその後と家族関係、梛子との行方も気になる。下巻へ。
2015/03/20
mariya926
賢治の弟である忠を通して日本兵がいかに過酷な戦争をしたのかが描かれ、また賢治を通してはアメリカ側が描かれている。皮肉なことに戦場であってしまった兄弟。そのことが原因で荒んでしまう忠。戦争が終わっても戦争裁判に突入し、賢治が通訳モニターとして活躍するが、内容がとてもリアルに戦争裁判の事実を知ることが出来、戦争について考えさせられる一冊でした。そして二つの祖国のはざまで苦しんでいる移民と二世の苦しみを嫌というほど見させられました。
2016/07/11
zoe
末弟は戦死。もう一人の弟とは戦場にて敵味方として再会。原子爆弾投下。奔放な妻。裁判と各国の綱引き。価値観を共有する友人からの変化。公正を貫こうとすること。こういう1980年代はじめの本が日本で発行され、読まれていることをとっても、日本が戦争を反省してないと言われる筋合いはないわと感じる。改めてソ連は内と外でとんでもなく見立てが変わるお国なんだろうなと思う。ゴルバチョフが懐かしい。この小説にも悪役上司が登場。池井戸作品・時代劇の様に、制裁があってスッキリすると思った矢先。ストレス発散にはならない展開。
2018/04/08
風に吹かれて
米軍の語学兵として日本人捕虜の尋問や日本軍が残した書類を翻訳するという仕事を担った日系二世の天羽賢治は東京裁判における翻訳・通訳をチェックするモニターを命じられる。再読だが、裁判における翻訳に日系二世が深く関わっていたことを本書で初めて知った。米軍主導の日本を裁く裁判における重要な役割。 →
2022/03/11
ヨクト
米軍としての賢治、日本軍としての忠の視点から描かれる戦争からは、それぞれのお国柄が読み取れる。カミカゼアタックは米軍にしてみれば、理解できない思想に沿う恐怖の反撃であり、また日本兵にしてみても、恥と美徳と命と国との判断を迫られる出来事だった。終戦後の戦争裁判を取り上げられているが、溥儀が出て来たことには驚いた。戦後も向けられる日系二世への冷たい目。だが彼等にしかできないこと。そしてアメリカで生き抜く日系人の生き様。交錯し、苦悩する彼等の運命がどのような終焉を迎えるのか楽しみに、下巻へ、
2016/12/08
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