ムッシュ・クラタ (新潮文庫)
ムッシュ・クラタ (新潮文庫) / 感想・レビュー
優希
面白かったです。大河小説とは異なる味わいで、鮮やかな人間観察が短編の中で花開いていました。スケールの差こそあれど、人間の強靭さを鮮やかに描いているだけでなく、人間に対する慈愛をも感じられます。短編とはいえ、豊饒の味わいがあるのは著者ならではですね。
2016/11/19
mariya926
今まで読んだ山崎豊子さんとは一風違って新鮮でした。題名からしてなんだろう?と思いましたが、フランスに取り憑かれたダンディ倉田を書いた私小説的です。しかしこの様な生き方は戦前であった為に周りも何となく助けたりで出来たと思います。本人も理想と現実の狭間で大変だったと思いますが、家族の苦しみに「眼に落ちるような重い光がうつった」と表現できるのがすごいです。晴着とへんねしはこの時代ながらの感じを堪能できました。4つの作品とも1人の人の死にまで触れられていて、死ぬ直前の言葉にその人の人生が見えました。
2017/01/21
mt
人がなんと言おうとダンディさを失わない信念を持ち続けたムッシュ・クラタ。きざ、フランスかぶれと言われようと、幼子から身につけた信念を曲げない強さは、意固地ではなく人知れない美意識なのだ。息詰まる社会派小説を書き続ける中で、突如として現れたこんな作品も小休止をしているかのようで、読む側もリラックスできる。作家の理想の人が描かれていると考えながら読むのもまた面白い。
2016/05/25
エドワード
ミスターとムッシュでは語感にかなりの隔たりがある。戦前戦後と毎朝新聞(!)のパリ特派員を務めた倉田玲氏。洗練されたダンディズム故にムッシュ・クラタの愛称を賜るも、鼻持ちならぬキザ野郎という揶揄をも含んでいた。今でこそ誰もが知る、ボードレールにドビュッシー、マキシムにゲランを愛し、フランスに恋した一人の男。その姿勢、矜持の源は建築家の父の西洋趣味と母の厳しい躾にあった。最後の言葉がヴーレヴー ザタンドル ア ナンスタン(一寸待つて呉れ給へ)というのが泣かせる。他に浪花の情の物語が三編。「へんねし」が濃い。
2013/09/21
zoe
ドラマ白い巨塔トリガー。フランス、西欧に魅せられたクラタを多面的に分析するムッシュ・クラタ。男女のせめぎ合いの晴着、へんねし、醜男。描いた作者が女性だけに、女性の怖さと奥深さを感じる3篇でした。へんねし。へんねし。
2019/05/31
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