約束の海 (新潮文庫)
約束の海 (新潮文庫) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
山崎豊子先生の未完の遺作。三部構成をお考えだったようで本作はその第一部に位置。潜水艦乗りの若者を軸に二度と繰り返してはならない戦争の話を紡ぐおつもりだったとのこと。さぞご無念だったと思います。一ファンとしてもこの先が読みたかったなと寂しく思い、本を置きました。潜水艦と一般の船が衝突事故を起こし30名もの尊い命を失った未曾有の大事故。戦後、自衛隊の存在価値、存在意義を疑問視されている中での事故は、実話を基にしている。プロローグで筆を置くしかなかった無念。作者と作品群に感謝しながら未読作を追いかけます‼️🙇
2020/07/31
ケイ
未完の作品。その後の構想は 示されてはいるが、なんとも歯痒い。自衛隊は、本来は国を護るもの。昨今は、災害時の救助ばかりがクローズアップされるが、他国からの攻撃を想定した訓練を行っている彼らが、その存在意義さえ問われる世論がある中でモチベーションを保ち続けることの難しさを思わされた。しかし、だからこそ民間の船と事故を起こしてはならないのだろう。未完ながら問題提起として一読の意義はあるが、閉塞感に息苦しくなるような読書だった。
2017/07/20
扉のこちら側
2016年681冊め。著者最後の作品ということで文庫化を待っていたのだが、この第一巻(第一部)だけで未完に終わったのが惜しまれる。この巻では自衛隊の潜水艦と遊漁船の衝突事故で多数の死傷者が出たことで、批判にさらされ悩む若き自衛官のさわやかな恋を絡めながら、シリーズの核となる「戦争と平和」へのプロローグが描かれている。次巻からはいよいよ第二次大戦下で日本人捕虜第一号となった酒巻和男をモデルにした父の話が読めるはずだったのに。惜しい。
2016/09/03
こーた
潜水艦衝突事故、パール・ハーバー、自衛隊。息子と父の壮大な物語が、現在と過去と未来を繋ぐ。戦争とは何か、平和とは何かを問いつづけた国民的作家の絶筆。登場人物の紹介がおわって、さあこれから、というところで未完のまま終わってしまったのが、惜しい。代わりに載っている後の展開のシノプシスは、大河小説がいかにして構想され、作家の思考がどのように変遷し、それらが最終的に雑誌連載としてどう書かれていくか、その一端を垣間見ることができる。秘書による解説も含めて、最期まで、物語とはまたちがった趣向でも愉しませていただいた。
2017/10/15
ゴンゾウ@新潮部
山崎豊子さんの最後の作品。氏の作品は敗戦の傷を負いながらも復興していく日本人像を描いたものが多い。本作はその息子世代から始まり父親の戦争体験をシンクロさせて国防や平和を問う作品になる筈だったに違いない。最後まで読み切れないのが残念でならない。【新潮文庫の100冊 2017】
2017/07/30
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