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暗い絵・崩解感覚 (新潮文庫)

暗い絵・崩解感覚 (新潮文庫)

暗い絵・崩解感覚 (新潮文庫)

作家
野間宏
出版社
新潮社
発売日
2024-11-22
ISBN
9784101107011
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暗い絵・崩解感覚 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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マサキ

社会主義にのめり込む若者たちの姿が、ブリューゲルの絵画を絡めて描かれる。それぞれが主張を繰り広げるものの、その主張はイデオロギーというよりはむしろ自己。根底には恋人があり、母があり、戦争がある。背教、殉教、それ以外。その後の人生が重く切ない。「崩壊感覚」はまさにその後の物語。左手の指を戦争で失った男と隣人。死に向きあわざるを得なかった者のその後を、独特の比喩感覚を用いながら、その内部を探る。指先はそこにあるのか、ないのか。豆飯は腹にあるのか、ないのか。悔恨と喪失。そしてまた恐怖は後ろから追いたてる。

2019/02/13

夏炉

すさまじいぐるぐるぐるぐるに圧倒されました。『暗い絵』→お前らとは違うんだ、という主人公の(作者の?)悲痛な叫び。共感できる人も多そう。『顔の中の赤い月』→戦争を生き延びた男と女に残る傷跡。『地獄篇第二十八歌』→他人を理解できない男の叫び。『崩壊感覚』→首吊り死体の描写から手榴弾で指を吹き飛ばす回想に入るところが見事。僕はこの作品が一番好きです。戦争を体験した人にしか書き得ないこの痛み。すごいです。

2010/06/12

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