文学と私・戦後と私
文学と私・戦後と私 / 感想・レビュー
AR読書記録
20代後半,30そこそこで書いた文章とわかったときの驚き.ちょっと老成しすぎでしょう.「三田文学」の話に少し若者らしい心持ちが見えるものの,それが幻のような,あとのジジムササよ(悪口のつもりはないですが,適当な言葉が思いつかず).60年代でこんなに社会に絶望していた人が,よく2000年近くまで生き延びられたものよとも.いや,ほんと悪口言う気ではなく,ただ,戦前の価値観の,戦前までのエリート・インテリ階級の末端に位置している人,という印象を持ちました.いい悪いでなく.その位置から日本を見続けた人と.
2011/08/09
yagian
60年代の江藤淳の短いエッセーを集めた本。江藤淳の漱石への感じ方が、自分の漱石への感じ方と似ているというか、重なることを再確認した。「彼はいつもわれわれの隣にいる。彼はおびただしい知力と意志力と学識を兼ね備えた巨人であるが、決してわれわれの上にではなく、「尋常なる士人」としてわれわれの隣にいる。」
2013/11/11
コホン
「私」にこだわった文章の数々。私が何を思っているのか、何を好きなのか。こういう良質の文章を書ける人が今、存命の方でだれがいるだろう。 この世代の方は戦争を引きずって生きている分、浮つかず、真摯に学問にも取り組まれている。明治からこの世代くらいまでの方の作品は快い知性が感じられてすがすがしい。江藤さんの著書は恥ずかしながら、今まで手に取ったことがないけれど、「夏目漱石」他読んでみたい。
2012/02/27
うたまる
「伝統の感覚とは、全てのものに過去の影が付着していることを、そしてこの影が歴史年表やいわゆる科学的史観の分類棚の上にではなく、まさに現在の上に投影していることを感じとる感覚である。」
unterwelt
1974年刊行。海外のことをつづった第1部と自身について書いた第4部が良かった。特に「戦後と私」というエッセーの「しかしいったいこの世の中に私情以上に強烈な感情はあるか」という一文は印象に残った。ただ同じ文章を小林秀雄が書くと啖呵になるけど、江藤淳のそれは哀しさというか悲痛な叫びみたいに思えてきてしまう。これは著者の最期を知っているからかもしれないけど。ところで「『ヒッチコック・マガジン』の中原、大坪両氏が訪ねられ」とあったけど、小林信彦と江藤淳の接点って山川方夫なんだろうか。
2018/05/24
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