決定版 夏目漱石 (新潮文庫)
決定版 夏目漱石 (新潮文庫) / 感想・レビュー
fseigojp
今を去ること約半世紀前、大学で漱石を卒論に選んだ先生の熱い授業を聴く際の副読本だった いつかは 漱石とその時代もやらんといかんと思いつつ。。。幾年ぞ
2015/08/25
ニクロム
「苛烈な厭人家などというものはいつも理想を背にかついでいる。」そして、おそらく同じだけの悲しみも前に抱えているのだろうと思う。漱石の不機嫌も、鴎外の諦念も、太宰の絶望も、背にかついだ理想と抱えた悲しみが底にあって、それは江藤淳も間違いなく共通している。漱石を"my life-long friend"といった江藤の手によって、生々しく浮かび上がる漱石の姿は、江藤の姿もまた生々しく逆照している。それは漱石を一歩引いて批評するのではなく、漱石に寄り添って紡がれた「ぼく自身の漱石に対する共感の過程」だからだろう。
2017/02/11
shinano
社会的と殊に文壇的な派閥感から演繹する芸術観から見ての、漱石作品と漱石が描く人物に好き嫌いの感情がさも評論となるように理論武装する手法の評論がよくあることからすれば、戦後の漱石を評論するものの中で名著のひとつと言ってもいいのではないかとわたしは思う。内容が深い一冊である。特にわたしもこの著者が感じるのと同じ漱石観は、読み手のこちらが成長してくるにつれて、さまざまな新しい魅力を表してくれる稀有な作家だということです。「登世という名の嫂」「鴎外と漱石―その留学と恋と」この二篇は漱石研究文でも括目と思えた。
2010/07/05
バナナフィッシュ。
漱石の幼少期の両親による愛の不在。それにより、自己は何故存在するのかという疑問が生まれたという筆者の想像。この疑問を読むとユダヤ人という民族がなぜあれほどに頭脳がよいかという内田樹の指摘が思い出された。それはユダヤ人は放浪の民で、安住の地が与えられておらず、そのため常に自己を見つめるしかなかったからだという見解である。これが夏目金之助がなぜあれほどに秀才だったのかに一つの要因として提示できるかもしれない。
2015/01/20
NICK
ガチの文芸批評とはかくもガチ感が伝わるものなのか・・・と思った。単に全集通読しましたというのではなく(当然)。漱石の作品は何気なく読んでいたが、常に死に脅かされてきたと書いてあるのを鑑みると、改めて読めば江藤の言うように「重低音」が聞こえてくるかもしれない。
2010/11/10
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