黒地の絵 傑作短編集2 (新潮文庫)
黒地の絵 傑作短編集2 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ちょろこ
衝撃、の一冊。昭和が舞台の9篇。社会派推理小説の印象が強かった著者だけに、意外性と衝撃を味わった。一言で言うと底知れぬ人間の怖さを描いた作品だと思う。表題作「黒地の絵」は衝撃が半端ない。知らなかった、朝鮮戦争が九州の小倉にもたらした陰の事件。衝撃で掻き乱されるとはこういう事なんだなと実感する傍らで、恐怖と虚しさ、そして復讐の念を言葉にのせる松本清張の筆致にのみ込まれそうな感覚にも陥った。妻の不貞を疑う夫の復讐を描いた「確証」も衝撃。妻を追いつめるこの蛇のような夫が心底怖い。これぞ人が心に持つ毒だと震えた。
2023/10/11
さらば火野正平・寺
小谷野敦の本に、松本清張は初期の短篇が良いとあった。昨年、清張の戦国武将アンソロジーを読んでかなり面白かったので現代もの(昭和半ばだが)にも挑んでみた。一読。これは相当に面白い!。推理ではない。筒井康隆が「松本清張の小説に出てくる人間はみんな悪人」と喝破していたが、確かに。保身や自意識、疑いや嫉妬で崩れる日常。イヤミスの元祖ではなかろうか。どの話も暗い情熱が光っている。私が好きなのは『空白の意匠』。悲惨だが喜劇の側面があり、物事はつくづく光の当て方だと思う。悲惨極まる『紙の牙』、私小説『草笛』みな面白い。
2017/05/02
ふじさん
表題作「黒地の絵」は、米軍黒人兵の集団脱走事件の起こった小倉を舞台に、妻を犯された男の復讐を描いた重く辛い作品。「真贋の森」は、美術界における計画的な贋作事件をスリリングに描きつつ、形骸化したアカデミズムや閉鎖的な学界を糾弾した作品。一人の男の執念の物語。「装飾評伝」は、一人の画家の評伝から恐るべき真実をあぶり出す作品。「二階」「確証」は、夫や妻の不倫を扱う不気味な雰囲気の作品。どの短編も、暗い色調の作品だが、松本清張の見識の高さ、幅広いテーマや切り込みの巧みさを存分に味わえる。古さを感じない。
2022/09/22
hatayan
1950年に北九州で起きた米軍黒人兵集団脱走事件を題材にした表題作が秀逸。朝鮮戦争の最前線に送られて犠牲になることを運命づけられた黒人兵が暴動を起こし、妻を犯された男が加害者を探そうとするまで。戦場に近い九州の港湾で行われていた戦死者の防腐処理など生々しい記述も。その他、師匠の機嫌を損ねて学会を追われた主人公が子飼いの画家に贋作を作らせ復讐を試みる『真贋の森』、市職員を揺すって恥じることのない厚顔の新聞記者を描く『紙の牙』、スポンサーに配慮した紙面作りに消耗する新聞社の広告担当者を描く『空白の意匠』など。
2020/11/02
i-miya
2014.01.14(01/05)(つづき)松本清張著。 (p383) (確証、つづき)章二の妻への疑い。 二. 出張の間にも募る。 妻は不貞を働いている。 素行調査もどうか? 多恵子。 同課、片倉政太郎。 片倉夫妻、うまくいっていない。何かいい方法はないか。 あった!通俗的な医学知識の本を買う。 三. 章二は、夜11時からぶらぶら新宿をあるく。 人待ち顔に何人かの女が立っている。 珈琲、いただくわ。 20歳。
2014/01/14
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