半生の記 (新潮文庫)
半生の記 (新潮文庫) / 感想・レビュー
じいじ
自叙伝はあまり読まないのだが、松本清張のこれはすごく面白かった。幼少・青年期の苦労のあれこれが、ボヤキの自叙伝になっていないのです。流石である。幼少期のころは新聞記者になるのが夢だった由。モノを描く仕事は、好きな読書で自信があったのだろう。彼の家庭は、両親の喧嘩が絶えなかったそうだ。親身になって息子を育てたのは母親だった。清張は私小説を好まないので、自身のことを題材にした小説は書いてこなかったらしい。この自叙伝『半生の記』は、もう一度読み返したい一冊です。
2024/11/14
キムチ
三再読。吉村氏と清張氏だけ、自叙伝は染みる。山行で北九州に降り立つと、山の向こうにボタ山と「新聞社の下働きで走り回っている」図が目に浮かぶ。目だけはキラキラして…。生きんが為に五感と身体を駆使したであろうモノは微に入り細に渡って作品に織り込まれていると思う。場面ごとの会話や周囲の空気、背景になづむ朝焼け夕焼け… 坂口安吾や多喜二と似た温度を抱くのは私だけかも
2024/09/03
佐島楓
極貧の少年時代、印刷所に職を得た青年時代、新聞社に勤めた壮年時代・・・。戦争をはさみなおも生活維持に苦しみ続けた清張の筆は、ある種の壮絶さと苦悩ににじんでいる。大変な時代を潜り抜け、学歴的な差別を感じる毎日がのちの作品につながったのだろう。苦労なさった方だとは思っていたが、これほどまでとは知らなかった。
2015/09/04
かふ
図書館本。松本清張が作家になるまでの自伝的エッセイ。職工時代の苦労は、のちの底辺を生きる人々に対する視線となって生かされたのだと思う。朝日新聞という組織の中の一地方の準社員(今で言うハケンさんか?)であった下積み時代が様々な反権力的な作品を書かせたのだ。そして両親の愛情と。両親はお互いに喧嘩が絶えない家庭であったが、それも貧しさ故という社会に対する批評眼を持てたのだ。後の社会派ミステリー作家と成功する糧となる手記であった。
2023/12/13
江口 浩平@教育委員会
【小説】尊敬している校長先生から、座右の書として紹介してもらった一冊。出世の道を閉ざされた松本清張自身が、生きていくために貧困の中腕に職をつけていく姿がなんともハングリー精神に充ちていてカッコよかった。(普通ならば読み進めるのが苦しくなるような展開だったにも関わらず、憧れに近い感情を抱いたのが不思議だった。) 他の方も書いてあるように、どうしてこの後松本清張は小説を書こうという気持ちになっていったのかが窺い知ることが出来ず、続編があっても読んでみたいという気持ちにさせられた。
2019/01/05
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