眼の壁 (新潮文庫)
眼の壁 (新潮文庫) / 感想・レビュー
NAO
昭和電業製作所は営業成績がかんばしくなく、内実は火の車、社員の給料を払うためツナギ資金の調達に苦労していた。だが、その弱みにつけ入られてパクリ屋一味に手形を詐取されてしまう。『眼の壁』は昭和32年に書かれた。当時の検察庁検事から、探偵小説というと捜査一課の話ばかりだが二課の分野も書いてみてはどうかと言われたことがきっかけだった。詐欺や横領といった事件は時代を越えた共通の闇を抱えている。『眼の壁』がかなり古い話で時代がかってはいるものの、違和感なくすんなり読めるのもそのためだろう。
2022/08/08
ともくん
松本清張を読むと、いつも思うことがある。 物語を強引に、都合のいい方に持っていくということである。 本作でも、いくつも見受けられる。 しかし、それを感じさせない松本清張の筆力は凄いものがある。
2019/09/26
ミッフー
今まで数多くの清張さん読んできました。でも、僕的には一番残念な本📖💦生意気すみません🙏化学会社に起きた手形詐欺事件。責任感じ自殺した課長の部下が主人公で犯人を追う物語。好きな清張さんの作品は必ずといっていい程事背景にあるは時代的貧困やエゴ、それから逃げる為、利己欲求満たす為起きてしまった犯罪、それを追う凄腕刑事。罪を憎んで人を憎まず的な内容が多いのだけど🤔それと比べ同本は貧困や男女の痴情絡れといったものとも無縁❗️単なる詐欺事件を素人が追いつめるだけの非常に内容の薄っぺらい間延びした小説でした😫
2023/01/08
Hiroshi Ono
ドラマ化先読みシリーズ。恐らく学生時代に読んだ「点と線」以来の松本清張作品。1957年の書であり電話の取り次ぎや電報、特急「はと」など、現在とは全く異なるスピード感が逆に心地良い。加えていつものように地理感のない東京の記述以外は概ね知った土地ばかりなのも幸いし、正にきめ細かく点と線を繋ぎ合わせるような物語の組み立てには一気に引き込まれた。それにしても、主人公萩崎竜雄は会社勤めより刑事にでもなっていたほうが性に合っていたことだろう。本書を現代版ドラマにどう仕上げるのか、楽しみである。 ☆☆☆☆☆
2022/05/14
鮫島英一
昭和というどこか暗く薄汚れた雰囲気を巧みに描いた作品だと思う。パワハラ、個人情報、情報化などという単語が一切存在しない近くて遠い時代。松本 清張先生は後世に生きる僕らにその残照を見せてくれた。文章を通して頭の中で再現される風景は失われた時代の息吹そのもの。ミステリー小説を単なる娯楽小説ではなく、リアルティをもった作品として描いたからこのような感慨を抱かせる。だからこそトリック技術が向上する現代のミステリー小説を押しのけ、松本 清張先生の名を金字塔として輝かせるのだろう。
2023/05/09
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