けものみち(下) (新潮文庫)
けものみち(下) (新潮文庫) / 感想・レビュー
びす男
人倫から外れた「けものみち」を歩む男女。読者は奥へ、奥へと誘われるように読み進め、やがて社会のとんでもない深みにまで足を踏み入れていることに気づかされる。ともに歩んでいたと思っていた者が急に寝返る。別の誰かが不意に襲いかかってきたと思えば、突然消えていく。彼らは互いを喰い合うようにして進んでいく。野蛮で醜悪で、それでいて高度に知的な食物連鎖。最後に残った男も、やがて誰かに食われてしまう。誰かが消えても「次の誰か」が残り、道だけは残されていく。これだけ話を広げたのに、上手にまとめているのには感心した。
2015/09/06
NAO
戦時中の軍との癒着から、政財界の黒幕にまでのし上がった男がいる。その一方で、民子や久恒は、あまり裕福でもなく生活にあくせくし、ちょっとした出世を夢見ている。さらには、過去の権力者にうまく取り入って、のし上がっていこうとする小滝のような野心家もいる。結局、小滝のような冷徹さがない民子や久恒は、権力に振り回され、敗北するしかないということか。戦後日本の権力構造を垣間見た者たちの運命の変転が描かれているのだが、民子視点でしか鬼頭が見えてこず、そのすごさがあまり伝わってこなかった。
2019/05/14
タックン
戦後の政財界を裏から操るフィクサー・鬼頭。そこに女中と仕えた民子とに痴情の物語。民子の(けものみち)の運命は? 最後はどさくさ紛れに終わって消化不良!!民子はどうなった?子滝は何者?
2022/07/04
ともくん
モヤモヤとした終わり方。 これまでの伏線が、きちんと回収できていない感じ。 いかにも、昭和サスペンス的。
2021/03/30
hatayan
下巻では政財界の権力の重たさが不気味に迫ります。刑事の久恒は民子にちょっかいを出した一件が鬼頭の知るところとなり警察を追われ、復讐に執念を燃やし真相に近づいたところで消されてしまいます。民子のライバルであった米子は鬼頭の対抗勢力のスパイに取り込まれていたことが露見し殺害。後半は展開が速くなり、鬼頭はあっけなく病死し、盟友の秦野も暴力団に殺害。自分を見初めてくれた小滝を求める民子が迎える結末はやや意外。『わるいやつら』と同様、標題の『けものみち』は登場人物をことごとく指すことが感じられるものでした。
2020/11/16
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