受胎旅行 (新潮文庫)
受胎旅行 (新潮文庫) / 感想・レビュー
メタボン
☆☆☆☆ 焼跡派野坂の本領発揮の名短篇集。戦争の悲惨さに娼婦の悲哀も重なる「マッチ売りの少女」「娼婦焼身」が強い印象を残す。これと好対照に性をユーモラスに描く「スケコマシ同盟」「猥談指南」は面白い。性の歪さを描く「パパが、また呼ぶ」「浣腸とマリア」「タラチネの巣」は上手い。子供の残酷さが恐ろしい「子供は神の子」。
2022/05/16
三柴ゆよし
「受胎旅行」、「マッチ売りの少女」、「スケコマシ同盟」、「猥談指南」、「子供は神の子」など佳作揃い。種つけ馬の夫の悲哀、1本5円の御開帳、週刊誌のピンク記事に胸ときめかせる中年男、猥談売って口を糊する、これもやはり中年の滑稽と矜持。性と生の哀しさ、アホらしさを、かつてこれほどまで凄絶に描ききった作家が、日本にいただろうか。俗悪極まって真理となる。野坂昭如のおもしろさがギュッとつまった作品集。さすが。
2010/09/29
渡邊利道
妊娠を渇望するノイローゼの妻との子づくり旅行を描いた表題作、マッチでご開帳するえげつない街娼の人生を描いた傑作「マッチ売りの少女」など短い小説全十編。性と笑いとセンチメンタル。
2016/07/13
きゅうり
ほたるの墓の著者だったと読後知ったが、あの話もジブリの中では存外えげつない生に対する描写、生と性テーマにするのこの短編集のヒヤリと真に迫るふとした描写の鮮やかさ通ずるものありと妙に納得し、その根底に流るるこの世に生きることへの無常観、しかし一方で弱いもの、愛されぬもの、捨て置かれるものへの慈愛そこはかとなく感じられ、私は今生きていて良かったと無性に何かに感謝したくなるのであった。という気分。
2011/12/07
つちのこ
新潮文庫版1974年5刷。同年読了
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