てろてろ (新潮文庫)
てろてろ (新潮文庫) / 感想・レビュー
ω
野坂先生の長編。糞マニアのビン、巨体オナニスト新吉、酒飲み禅介。3人に妖女小百合と人殺し爺さんが加わってテロを企てるω!! 『平凡パンチ』に週一の連載であり、先生曰く支離滅裂、一寸先は闇とのあとがき。 野坂先生らしくエログロテロの三ロ。テロリスト達それぞれが迎える結末は心をえぐられるもの有り。 大声でおススメできないけどやっぱり野坂先生好き。面白かったω♫
2019/07/02
長谷川透
表現のタブー、形式のタブー、展開のタブー、小説を書く上でのタブーとされているものを大凡全て無視したトンデモ小説で、政治体制に対して、主義思想に対して、倫理道徳に対して、社会に対して、反抗できる全ての事物に対して徹底的に反抗、そして反抗という行為への反抗、その果てのテロリズム――殺人こそは他者との対話の究極の形、という思想に至る。糞便学者、オナニスト、酒乱、奇天烈爺、嗜虐憧憬の女、強烈なキャラたちが荒唐無稽に乱痴気騒ぎを繰り返しながら渾沌を深めて行くお下劣な世界は不快を通り越えてしまって爽快痛快でさえある。
2013/10/30
安南
これは白浪五人男だね!のっけから糞便談が延々と。グロい暴力描写にクラクラしつつ時にクスクス笑いつつ、黙阿弥かという調子のよい口舌にのせられて一気読み。文学に於いて、エロ グロ バイオレンスはどんな意味を持つのか。69年~70年に平凡パンチに連載されたと考えると当時の読者にとってイニシエーションの役割を果たし得たのかな。なんだかんだの終盤、全裸の小百合がビルの屋上で銃をぶっ放す捕物シーン!画として好きだなぁ。堪らないなぁ。そのくせプシュゥ〜というしぼむ音が聞こえるようなラスト。落語のサゲか。粋だねぇ
2013/07/08
ハチアカデミー
S 『ブヴァールとペキュシェ』殺人編、または現代版『悪徳の栄え』! 「我を忘れるほどの激昂に身をまかせたこともない」ほどに感情の起伏が弱くなりコミュニケーションが稀薄となった社会では、思想無きテロのみが他者に触れる方法である。というテーゼによって、おかしな三人組が立ち上がる。各の嗜好に合った殺人=テロによって、人間存在への問いと考察が述べられていく。やがてテロは国家を巻き込み… 過激、かつ時代が近い分より生々しい内容ではあるが、小説の極北とも言うべき傑作である。物語、キャラ、文体、思弁、その全てが凄い。
2012/04/28
三柴ゆよし
「人を殺すという行為についてのみ考え、また、しごく直接的に殺したり殺されたりする、その行為の中にだけしか、人間と人間のつながりを、確かめられないのではないかという、仮説を、ひたすらなぞった」という小説。沈着なる糞便学者、孤高のオナニスト、胎内回帰を願望する酒乱、陸軍中野学校出身の忍者じみたジイさん、死体でエレクトする痴女。以上五人があけくれる殺戮(テロル)の日々を饒舌に描く。これほど反社会的な小説は読んだことがないし、これほど面白い小説も滅多にない。やはり野坂昭如は俺の神さまだった。凄すぎる。
2010/11/04
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