KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

草の花 (新潮文庫)

草の花 (新潮文庫)

草の花 (新潮文庫)

作家
福永武彦
出版社
新潮社
発売日
1956-03-13
ISBN
9784101115016
amazonで購入する Kindle版を購入する

草の花 (新潮文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

masa@レビューお休み中

静謐でいて、鋭利な刃物のような危うさを孕んでいる。美しい文章に惑わされがちだが、単に美しい情景と純愛を説いた物語ではない。だからこそ、そこには真実と呼べるものが転がっているのではないだろうか。恋も愛も欲望も…。不自然までにドラマチックで、どこまでが現実で、どこまでが夢の出来事なのか判別がつかない。それは、もしかすると、この物語だけの話ではないのかもしれない。きっと、今自分に起きていることも、周囲で起きていることも同じなのだ。曖昧として、夢と現実の境目もわからない世界なのかもしれない。

2015/11/04

とても純粋で繊細で美しい、だけど少年のような未熟さと一途さを感じさせる。そこが綺麗だから哀しい。汐見はまるでガラスのようだし、藤木はりんどうの花のよう。千枝子は可憐な蝶に思えた。これは「愛」だと思い込んだ「恋」なんだと思う。孤独や死、自己に対しても同様の痛みを感じた。それでも久しぶりに文学を読んだという満足感はとてもあった。そしてギリシャ人の信仰について触れた何でもないような会話が、僕にはなぜだかとても心に焼きついた。

2014/02/01

neimu

高校3年の誕生日に好きだった男の子にプレゼントしてもらった作品。しかし、純粋な孤独のくだりを読むと、恋愛は限りなくプラトニックがいいのかと思ってしまい、何もなく終わった切ない昔の記念の作品。表紙を見るだけで切なくなる。作家としては福永武彦の息子、池澤夏樹の方が成功しているのかもしれないが、私にとっては永遠の福永武彦がこの作品の中にいる。

きりこ

死生観・宗教観など哲学的なテイストのある作品でした。忍を思慕する気持ちも純粋な魂という理想を求め過ぎてしまう汐見の精神性を忍は重荷に感じてしまったのではないだろうか。また互いに愛しながら完璧な愛の形を求めるがゆえ、千枝子と別れることになる汐見。千枝子が汐見を理解しようとする姿がひたむきで健気だったけれど、汐見のようなタイプと人とは幸せになれないと思う。文章はとても美しいけれど孤独過ぎる生き方は絶望的で受け入れがたい。汐見の人生の悲しさを思う。ただ作中のショパンのエピソードだけは心が温まって好き。続く→

2014/08/02

遥かなる想い

本を読みながら息を呑むことがあるが,本書の「汐見茂思」の 生き方が まさにこれにあたる.福永武彦は 非常に清冽な文章を書くといった印象が 『海市』の時に感じたが本書を読んで一層その感を強くした。物語り自体はさほど目新しくはなく、はかなく孤独な青春の譜を丹念に描いたもの。ただ全編に漂う一種研ぎ澄まされた感性が物語自体を引き締め、登場人物をひどく知的なものへと変貌させている。主人公汐見の奇妙なまでの孤独感・疎外感は著者自身が持っていたものなのだろうか。藤木千枝子が最後に語る手紙の中からひどく哀しい想像をした。

2010/05/12

感想・レビューをもっと見る