廃市・飛ぶ男 (新潮文庫 草 115-3)
廃市・飛ぶ男 (新潮文庫 草 115-3) / 感想・レビュー
遥かなる想い
福永武彦の 短編集。いずれも清冽な抒情的な作品だが、特に「廃市」における郁代・安子・直之の関係は息を呑むようで 、勘違いから身をひいてしまう郁代の描写は際立っており、筆者の筆力を 感じる。ごく基本的な三角関係を描いているだけなのだが・・・
2010/05/12
えも
読友さんに触発されて、実に久し振りに家の文庫本を手にした。昭和49年発行とあり、紙は黄ばみ、字は今と比べて小さい。でも、とても懐かしい。大学時代にのめり込んだ福永武彦の、このロマネスクな文体が▼8編の中・短編。何れも芸術への憧憬と死の匂いに包まれ、安部公房的な作品もいくつかある▼そんな中、やはり「廃市」の退廃が、堀割の滅びゆく町が、淋しくて好きです。
2018/05/08
しゃん
再読。福永武彦の作品は、いずれも死が基層にありながら、哀しくて美しい。文体が流麗だからか、独特の繊細な世界に入り込むことができる。本書所収の作品が描く「未来」は、どれも可能性が閉ざされたものが多かったように思う(特に「未来都市」)。そこに明るい未来は見られないが、芸術や愛と現実生活の狭間においては、これがリアルなのかもしれない。表題作の「廃市」は、行ったことはないが、昔行ったことがあったような気がする寂れ行く町が舞台。名作だと思う。芸術と生活、愛、生と死。個人的には、「樹」が好みだった。
2018/03/21
メタボン
☆☆☆☆ 「愛」についての観念的な小説が多いが、文章はやはり名文と思う。プラトニックな三角関係における心情の機微が印象深い「廃市」、少年のアンニュイと五十路の鰥夫(やもめ)のそこはかとない寂量感と、死につつある青年の純情がいとこ同士の愛の中に差し込む影が綾なす陰影が深い読後感となる「退屈な少年」が秀逸だった。「未来都市」と「飛ぶ男」は実験的な側面が強くも必ずしも効果的とは思えなかった。
2015/04/14
michel
★3.0。『飛ぶ男』のみ読了。病室のベッド左には窓。その向こうの外界は未来。反対のベッド右には鏡の据えられた扉のある壁。そちらは過去。なぜ人間は飛べないはねか、なぜ自由に飛べないのか。魂が飛ぶ。河から病院を見る。やがて窓からこちらに向かってやって飛ぶ男。私には難しい作品でした(^-^;
2018/10/10
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