死の島 下巻 (新潮文庫 草 115I)
死の島 下巻 (新潮文庫 草 115I) / 感想・レビュー
月
作品名は小説の中の絵とアルノルト・ベックリンの死の島から由来。過去と現在の複数の時間軸と複数の視点、主たる登場人物の内的独白。一見手に届きそうに見えても、人間の深い内面、感情、心理の更に奥にある決して触れることの出来ない絶対の孤独と虚無。広島(過去)の記憶、漢字片仮名による意識表現、素子の視線を通してそのとき内部に生まれたものが・・深々と突き刺さる。小説家にとって小説の完成形(小説家にとって納得の一冊)などありはしないと感じるとともに、今の時代、読者の深層を揺らす作品もまた少ない。
2014/12/03
YY
解説は環構造の小説、と解している。それもそうかあ。受け身で、選ばずに過ごした相馬鼎には悲劇しか待っていない。現実により目を向けなければならないことを学んだ彼の視線はごまかしがちだったそれまでとは違い、シリアスなものとなる。内部に抱える絶望や死をいかに乗り越え、生きてゆくか。読み返してよかった。
2013/01/06
フク
★★★★★。本作には主な登場人物が4人いる。だが、珍しく語り部たる青年(相馬鼎)が福永的苦悩を背負ってはおらず、あくまで明朗、罪の意識の部分は二人の女性に分け与えられている。青年は持ち前の思索的性向、あるいは彼が書き進める未発表の小説という想像的描写に委ねられる。二人の女性―萌木素子と相見綾子―の悪魔的、聖女的なそれぞれの稀有な個性の造形、過去の罪に囚われた者同士であるが故に理解しあえる寂しさと絶望を共有する姿への共感など、
2013/05/27
triorgan
驚愕の結末。たんに奇をてらったのではなく、これ以上なく効果的だ。
2012/04/25
songbird
☆☆☆☆
2009/02/01
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