風のかたみ (新潮文庫 ふ 4-10)
風のかたみ (新潮文庫 ふ 4-10) / 感想・レビュー
Kawai Hideki
「今昔物語」から素材を集めてパッチワーク的に紡ぎ出された平安悲恋物語。信州から都に出てきた若き田舎侍、都を震撼させる盗賊、左大臣の子息でボンボンのプレイボーイの3人が、入内間近の美しき姫をめぐって争い合うお話。恋物語自体は不完全燃焼のまま、なんだかなあの幕切れ。一番の見所は盗賊の正体か。
2015/06/27
メタボン
☆☆☆☆☆ 淡々として美しい文章により悲恋が展開される。今昔物語の世界にどっぷりと浸った。解説によるとこの物語の元となる直接の話はないものの、物語中のいくつかのエピソードの題材となる話が今昔物語の中にあるとのこと。芥川龍之介とはまた違う雰囲気の物語が良かった。次郎、萩姫、楓、安麻呂、不動丸、それぞれの恋は成就せず、ただ風ならぬ笛の音のみが寂々と嫋嫋と響き渡るのみである。
2018/11/06
空箱零士
★★★★ これが失恋の物語であることは言うまでもないとして。恋を失うとはどういうことか。それはある情念を失うことである。叶わぬ思いを深奥に閉じ込めること。あるいは運命によって、あるいは死別によって。この物語は結末に何も残さない。一つ、永別の想い人の笛を遺して。その音色のみが在りし日の情念を想起させる。かつてそこにあった情念は宿命にて儚く散り、喪われる。その手に宿命を握ろうとした操り手でさえ喪失を目の当たりにするのみだ。だからただ、風のかたみを聴け。風に乗り時空を超えた情念、その歌を、僕らの心に残すために。
2014/08/28
咲蘭
なんと切ない!次郎の優しさと強さが沁みる。
2013/12/26
うめ
美しい物語なのですが、救われません。美しいんですけど。うわーってなります。(何て感想だ)
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