海市 (新潮文庫 ふ 4-11)
海市 (新潮文庫 ふ 4-11) / 感想・レビュー
コットン
読メ大阪オフ会のおおにしさんのビブリオバトル紹介本。妻ある画家の私が旅先の女性を愛し始めるがその女性の初登場シーン(桃色のセーターが日没のため不吉なほど赤く血に染まったように見えその目は私の頭上の蜃気楼を見ていた。)からして、アンニュイな匂いが漂ってくるそんな物語。
2018/02/13
冬見
冒頭と結末部が邂逅の一瞬に収束する構成がにくい。あの美しい光景が死を暗示していたなんて。ああでも確かに、美しいものは死に近い。結局彼は、20年かけて3人の女性を壊してしまったのだ。主軸は画家・渋太吉の一人称で、そこに「彼」と「彼女」の挿話が絡みつく。物語を読み進めるうちに「彼」と「彼女」が一人の人間を指しているわけではないことに気付く。しかし、さらに読み進めていくうちに逆の現象が起こる。相違点から彼らを見分けていったはずなのに、むしろその相違点によって、彼らの類似点が浮かび上がっていくのである。
2019/05/16
かわちゃん
☆☆☆☆☆ 映画の好みとかが合う友人に、恋愛小説でこの一冊は?と問うたら、選んだのがこの本。昭和40年と古い本なれど、確かに傑作ですね。福永さんもこの本も全く知らなかったので、眼から鱗。抽象画家の澁太郎と、若い人妻安見子の恋愛を縦軸におきつつ、時系列をバラバラにした、過去の様々な恋愛のモノローグを配置するという、非常にモダンな構成と、デカダンな愛情表現の美しさ。男は愛から逃げ、女は愛に挑む。愛の本質の物語。
2016/11/22
うめ
読んでいて痛くなる。安見子の恋愛観が、幼かった頃の私と似ていて本当読むのが痛くて転げ回る。そうね、こういう風に、人を愛するということ、を小難しくこねくり回して、それが尊い事だと思っていて、それを人にも押し付けていた時期もあったわ。恥ずかしい。多分その頃に読んでいたら、この物語にきっと陶酔してた。解説から、名前のアナグラムを知って、この物語の構成も、美しさを求めつつ、計算されているのがわかりました。それにしても、濡れ場(敢えてこの表現で)がエロすぎる。なんて事だ。
2015/01/09
双海(ふたみ)
福永さんの本、のんびり集めています。古書店で見つけたら買う、みたいな感じ。『草の花』をまた読み返してみたい・・・。
2014/11/20
感想・レビューをもっと見る