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きもの (新潮文庫)

きもの (新潮文庫)

きもの (新潮文庫)

作家
幸田文
出版社
新潮社
発売日
1996-11-29
ISBN
9784101116082
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きもの (新潮文庫) / 感想・レビュー

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優希

きものというだけで人生を描けるというのにため息ものです。きものを通じて成長する少女は、半生そのものがきものに寄り添っているようでした。きものに美しさより着心地を求め、たしなみや人付き合いといった生活に必要な心得を「着る」ことから身につけていくのが凛とした少女の姿と重なります。母と娘、祖母と孫という関係が持つ時間を体に染み込ませながら過ごす時間と経験は、「女性の生き方」として考えさせられました。傍らにきものがあったからこそ学んできたことはやがて授けることになっていくのでしょう。和の美しさの漂う作品でした。

2016/08/29

Willie the Wildcat

反面教師の2人の姉、視点を拡げる親友、そして人生指南役の祖母。単なる所作・作法の話ではなく、凛として生きることを体現している感。具現化したのが、八百屋の一角の商売での件。「覚悟して着る着物」と「顔を晒す」が象徴。母の形見分けに込められた主人公の母への想い、そして決意!姉2人への宣言が爽快。唯一、独特の世界観を醸し出すのが、そのとの関係性。1人の女性、大人としての精神的な旅立ちなのかもしれない。あとがきによると、本著は著者の死後に出版とのこと。続きがあったとしたら?う~ん、大人しくはしていないだろうなぁ。

2020/05/03

mii22.

明治の終わりから大正時代に少女から大人の女へと成長していく一人の女性の半生を着物に寄せて描かれている作品で、私にとってとても共感できる小説だった。微妙に揺れ動く女心を簡潔かつ粋な文章で表現し、読み手の背筋をしゃんと伸ばしてくれる気持ちよさ。心の琴線にふれる数々の言葉。きっぱりとしたなかにも柔らかさを感じる文章表現。どれも今自分が欲していたものだった。よき相談役の祖母に助けられ成長していく主人公るつ子とともに、着ることから暮しの知恵やきまりごと、たしなみを学んでいく体験は素晴らしいものだった。

2019/10/31

がらくたどん

世に傑作を予感させる未完の物語は数あれどの1冊。「カンが強いくせに神経がほそい」三女るつ子の頑固故に要らぬ苦労まで背負いこみながらの半生記。何回目かの再読で年齢が上がるほどに俯瞰する視野が多少なりとも拓けるのでデコボコ三姉妹の可愛げのなさへの愛しさが増し家政名人的な祖母の金言も身に沁みる。そして何より「着る」という行為を通して暮らしの土台の衣食住がちょっと目を離すと天狗の団扇並みに人を誑かす事に思い至る。るつ子に装いを教えた祖母が震災後に唐草風呂敷をアッパッパに仕立てて笑う。まず人がいて着物を着るのだ。

2022/10/02

いちねんせい

なんでもっと早く読まなかったんだろう。とても大事な本になった。るつ子の成長、着物への向き合い方、普段外には出さないであろう登場人物たちのむき出しの感情など、その描かれ方に心を持っていかれっぱなし。しまいにたまらなく祖母に会いたくなる始末。読み終えた後も余韻たっぷり。これを読む人は、いずれかの登場人物に自分を見るのではないだろうかな。よい本を読ませてもらった。

2017/03/30

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