KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

第四間氷期 (新潮文庫)

第四間氷期 (新潮文庫)

第四間氷期 (新潮文庫)

作家
安部公房
出版社
新潮社
発売日
1970-11-27
ISBN
9784101121055
amazonで購入する Kindle版を購入する

第四間氷期 (新潮文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

この小説が書かれたのは1958年~59年。手法はミステリー風でもあり、また未来を予見するという意味では近未来SF風でもある。安部公房はダテに医学部を卒業したのではないということ。当時の科学水準では知られていなかったが、語られていることは遺伝子操作そのものである。そして、本作は同時にAIの将来像(それはまさに現在の姿に他ならないのだが)をも見通している。その結果は、なんともおぞましくグロテスクである。海底火山の噴火による潮位の上昇といった仮構は、あくまでもメタファーであり、ここに現出するのは案外にも⇒

2023/05/02

absinthe

面白い!ミステリーでもホラーでもサスペンスでもある豪華な意欲作。地球温暖化、生物改変技術、人工知能の行きつく先。コンピュータにより完璧に再現された自分との戦いは論理パズルの様でもある。50年以上も前に書かれた作品だが現代社会が抱える闇の核心をついていると思う。無作為に選ばれたと思われる表の現象が裏で繋がっている展開も見事。水棲人はユーモラスで可愛らしくもある。

2024/08/06

優希

あまりに恐ろしくて戦慄が走りました。未来を予言する機会が見た人類の行く末は、社会への警鐘そのものです。現在における未来とは、文明の行き着く先は天国か地獄か。機会が語る未来は激変したものでしたが、それを全て鵜呑みにするのはやはり難しいものがあります。別の未来があることも可能性として見なければ、豊かなものへと発展していくのを握りつぶすことになりかねないでしょう。ただ、現在に安住し、輝く未来を盲信することへの痛烈な告発は衝撃に陥ることは間違いありません。恐怖と異色に彩られたSFだと思います。

2016/09/12

のっち♬

「本当に自分の未来を知ってしまってからでも、やはり生きたいと思えるかしら」コンピュータ、水棲生物、地球水没と、執筆時期からしても著者の発想力の豊かさを物語っている。偶発的なものから意識的なものへ、連鎖反応が結びつき、一本の鎖になって首にまきついてくる著者の未来は凶暴な生き物のようで薄気味悪い。「真の未来は、おそらく、その価値判断をこえた断絶の向こうに「もの」のように現れるのだと思う」著者は日常的連続感を糾弾し、未来の残酷さとの対決をせまる。保留静観してないで、量的現実をもう一度質的現実に綜合してみようか。

2019/05/02

藤月はな(灯れ松明の火)

政府(及び関係諸国との関係)の都合上、政治的意向で予言機を使う事が禁じられた。予言機の発明者は助手の提案から予言機を個人予想に使用しようと目論むが・・・。ミステリー、SF、哲学応酬などと愉しめる作品です。大局的な見方ができずに論を繰り出して現状に縋ろうとする人間(発明家)の無様で滑稽な事よ。一方、予想を越える未来に備えて行動する予言機とその関係者の冷徹さにも空恐ろしいものを感じる。彼らの努力は実を結ぶだろう。だが水棲人である少年が地上を焦がれる挿話は反証する。人類は本当に未来への可能性を受容できるのかと。

2021/06/24

感想・レビューをもっと見る