水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)
水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作2作を含む、安部公房の比較的初期の11の短篇から構成。まずは懐かしい「デンドロカカリア」から。高校生の頃、日本文学におけるシュールレアリスムというものを初めて知った記念碑的作品(私にとってにすぎないのだが)。「水中都市」にしてもそうなのだが、こちらはとりわけ絵画的な造型にこういう文体もあるのかと目を開かれた。そして衝撃的だったのは「闖入者」。これは後の戯曲『友達』と同趣向なのだが、事柄と主人公の置かれた状況の理不尽では収まらない、すなわち不条理を知った作品。なにかと懐かしい作品集だった。
2024/06/30
keroppi
三木茂夫の本を読んでいて、人の中にある植物について書かれているところがあり、「デンドロカカリヤ」を思い出した。人の体は、動物的な部分と植物的な部分があり身体をひっくり返すと植物が出てくると。安部公房は、高校時代に初めて接し、その不条理で不思議な世界の虜となり読みまくったものだ。ほんとに久しぶりに読んだが、やはり引き込まれてしまう。「デンドロカカリヤ」には、単なる想像を超えて、人の心と身体の不思議さが描きこまれていたんだなぁ。また、昔夢中になった本の数々を読み返したくなった。
2021/06/16
Vakira
コボさん初期の11編の短編集。僕の勝手な思い込みだが、ソローキンが文学破壊者ならコボさんは文学革命児だ。風刺でも政府批判でもファンタジーでもなくSFでもない新たなジャンルを作りだした。このパターンはコボさん独自しか作れないので敢えてのコボ文学とでも命名しよう。書かれたのは戦後4~5年の頃、民主主義へと言っても軍国主義の残党が蔓延っていたのではないかと想像してしまうのは不条理なまでに威圧感のあるキャラが登場するからだ。人間は遺伝子の設計図に基づき成長し、老いる。コボ文学の主人公の遺伝子は過去を伝えない。
2024/03/04
優希
シュールな短編集でした。難解さも伴うと言えるでしょう。無理して理解しようとせず、感じるままに楽しめば良いのかもしれません。
2022/06/13
ω
昭和24-27年に発表された短編たち。大好物の変身(変形)モノがちらほら。 個人的No.1は「闖入者」ω! 家を乗っ取られる系の話で、ほんっっとうに厭で厭で厭な話になってるけど随所で笑ってしまう笑 「デンドロカカリヤ」なんかは、コボが芥川賞を27歳で受賞するより前の作品ですが、こちらも大好きω ♫
2023/05/20
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