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人間そっくり (新潮文庫)

人間そっくり (新潮文庫)

人間そっくり (新潮文庫)

作家
安部公房
出版社
新潮社
発売日
1976-05-04
ISBN
9784101121123
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人間そっくり (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

本書は解説によれば「日本SFシリーズ」の1冊として刊行されたらしい。また裏表紙にも「異色のSF長編」とある。しかし、これがはたしてSFかといえば、私の解釈からすれば答えは否である。今日的な観点からすれば(刊行は1967年)むしろ、純文学の範疇に位置づけられるべきだろう。主題は、自己と、そしてまたその周縁の他者をも含んだアイデンティティへの懐疑ということになるだろうか。それを4人の登場人物(主には2人だが)の対話の中で描いていくのであり、その意味では小説でありながらも、きわめて演劇的な指向性を持った作品だ。

2014/04/29

のっち♬

ラジオ番組の脚本家の自宅にやってきた火星人を自称する男。数学の公理の如く証明不可能な理路整然とした主張から堂々巡りの応酬が続く。SFよりも哲学問答に近い感触。公理がグラつけばその先の《そっくり》という概念ごとグラつく、鮮やかな主客の逆転が平衡感覚を失わせる。トポロジー理論を用いて人間の帰属本能をここまで諧謔味と独創性に満ちたアプローチで解剖する著者はやはり非凡だ。様々な自分を持つようになった現代人は果たして疑うだけの、失うだけの現実を積み上げているだろうか。正気と狂気、それは案外《そっくり》だったりする。

2022/10/27

優希

面白かったです。ひたすら会話で成り立っている異色のSF。それはまさに心理戦だと思いました。無意味に見えながらもお互いを探り合っているような雰囲気があって興味深かったです。狂気が巡り巡って生まれる世界は正気の世界なのかはたまた狂気のままなのか。自称・火星人は本当は地球人なのか、はたまた人間の仮面を被った異星人なのか。妄想か現実かがわからなくなる錯覚のような世界に引き込まれました。

2016/08/04

中玉ケビン砂糖

、火星はSFの十八番(『火星年代記とか『火星のプリンセス』とか『火星の人』とか)、宇宙人、そしてラジオの脚本家とくれば、やっぱりオーソン・ウェルズの伝説的エピソードが念頭にあったのだろうか、デビュー作の「終りし道の標に」(だったっけ?)があまりおもしろく感じられなくてほったらかしにしておいたが、これくらいの長さでそんなに純文純文していなければ「もしかして自分、安倍公房けっこう好きかも(『第四間氷期』とかも好きだし)」と改めて思う、「なんだかへんてこな来訪者」という点では『友達』とのつながりも?、、、

2015/05/09

シナモン

勝手な理屈を並べ、口が減らない火星人を名乗るセールスマンに終始イライラ。振り回されていく脚本家に「負けるな、脚本家!」と応援しながら読み進めるもいつしか自分もその巧みな話術に引き込まれ…。正気と狂気が混じり合い、次第に混沌としていく空気感がたまらない。面白かった!

2024/06/02

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