夢の逃亡 (新潮文庫 草 121-13)
夢の逃亡 (新潮文庫 草 121-13) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
安部公房の最初期の7つの短篇を収録。いずれも昭和23,4年頃に書かれ、安部公房25,6歳。敗戦後の混乱がまだ残っていそうな時代であり、精神的にも価値観が根底的に喪われた社会状況が背景にはあったのではないか。作品の全編に混乱、混沌と、そこから逃れようとして逃れられないことへのいら立ちに満ちている。そして、それは出口のないカフカに似ていなくもない。後に芥川賞を受賞する『壁』などの、ある意味ではすっきりと明確な像を結ぶ安部公房はまだここにはない。読者との共感の求め方も模索する時期でもあり、難解さはそれゆえか。
2021/08/08
みっぴー
安部公房が二十五、六歳のときに執筆した短篇集です。友人にすすめられて読んでみたのですが、はっきり言って、全部意味が分かりませんでした。夢をテーマに置いているらしいのですが、本当に訳が分かりません。感想もちょっと無理です。一応読んだことだけ記録しておきます。
2016/05/02
ドン•マルロー
安部公房の最初期の短編集。解説によれば、「終りし道の標べに」と本書収録作7編をあわせて処女作群とみる向きもあるようだ。「壁」が描かれるまでの過渡期に生みだされた作品たち。といっても、異質だと思われたのは「牧草」、「名もなき夜のために」くらいか。神なき世に自分自身を告発する「異端者の告発」、名前とその本質について深くえぐろうとする表題作など、直截に「壁」をイメージさせるものが大分を占めるのだ。やはり安部公房はそうでなくてはならない。夢の中でポストになった男が、現実のポストになるなんて最高じゃないか!
2016/06/26
高橋 橘苑
文庫本のあとがきに「あれは戦後だった。そして、私の青春の最後の数年間だった。当時、私には長い間、住む家がなく、また金がなく、したがって飢え疲れていた。」とあり、本作が安部公房の出発点とも言える最も初期の7つの短編である。表題作を含めて、安部公房の作品と意識して読まなければ、文学青年が観念を弄んで書いた文章だと断言してしまいそうである。もちろん、名前の否定、非合理な展開など後年の片鱗は随所に感じられるが、戦後的な一切の価値否定の中で、自身の存在をも探している「飢えた青春そのもの」の作品だと思う。
2016/09/26
そうたそ
★★☆☆☆ 現在広く知られている著者の諸作品が夜に出る前に書かれた作品を収めた一冊。元々、著者の作品は難解なものが多いが、これは特によく分からなかった。読み込めるだけの脳があればいいのだが、あえなく撃沈。
2019/12/15
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