箱男 (新潮文庫)
箱男 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
安部公房の小説は、その構想の根底から荒唐無稽でありながら、奇妙なリアリティを持っている。この『箱男』も例外ではない。それを可能にするのは、表現のリアルな細密化と(その意味では、これは徹底して「視線」の小説である)、もう一方には現実の中に立脚しているはずの読者である自分も、あるいは箱男になるかも知れないという危うさである。箱男にとって、対人、対世間との間にインタラクティブな関係性が構築されることはない。常に一方向からであり、まさしく「窃視」に他ならない。したがって、「言葉」もまたここでは不毛なのである。
2014/10/06
遥かなる想い
ダンボールを被った浮浪者が主人公である。「箱」が何を意味するのか今でもよくわからないが、他人から見られることなしに、相手を一方的に覗く快感に溺れていくという感覚はきっと存在するのだろう。ダンボールには覗き穴があり、箱男は自分を見られることなしに相手を覗き見ることができる。設定はよくわかるのだがストーリーは全く理解できかった。読者にわざとわからないような困難な話にした、というのが今では定説のようだが。
2010/06/20
ykmmr (^_^)
まずは…自分が読むことを、初・挑戦しようとした時と、TVで紹介されて、作者が注目されることになったタイミングの良さに、笑ってしまった。同時に、自分に読めるかに恐れを成した。実際は…やはり難しい。まずは…どうして…『箱』なのか…ミステリーなのか?空想なのか?実際に『箱』を被って生活してみた話なのか?物語的に、どれとも取れて奇想天外。箱外の状況は想像出来て、その通りだと思うが、その状況も、写真や作者の考察コメント入りだからなのもあるが、これは分かりやすい。読者の読解力の相比が、この話の解釈になると思い、
2022/07/07
Vakira
数十年かぶりに再読。当時読んだ時は10代だったので、全く異なる印象を受けた。箱男は段ボールをかぶり最低限の生活道具を持って街を徘徊する。街に溶け込み風景と同化する。他人の目に映っても、ない物と判断される。箱男は見られずに覗けるのだ。覗く者と覗かれる者、本物と偽物、箱と裸体、男と女。まるでSとMのようにも感じられる。この世界観は凄い。実験的小説だ。この世界を創造した安部公房恐るべし。もう20年位前に亡くなってしまったが、悔やまれてならない。
2014/07/19
yumimiy
箱男、どう記憶に留めようか。正解はない、人それぞれの解釈でいいんだ。箱男に問う、あなたホームレスのダンボール族でしょ?すると箱男は、乞食、浮浪者じゃない!見る、匿名、主観、覗く、欲望に特化したのが箱男だ!と偉そうに抗議。なんじゃその理屈、私から見ればやっぱホームレスだ。さてはネットカフェに寝泊まりしSNSで誹謗中傷やってるんじゃないのと問い詰める。するとダンボールの穴から血走った目玉が。その目を見て私は思い出す。あ!田中君!小3の時の同級生だ。田中君はダンボールでロボットを作る名人だった。思考ガチャポン!
2022/07/24
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