白い人・黄色い人 (新潮文庫)
白い人・黄色い人 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
「白い人」は1955年上半期芥川賞受賞作。リヨン留学、ジャンセニスム、サド文学―これらが見事に結実して誕生したのがこの作品。遠藤文学の原点がここにある。それは、後年まで彼が求め続けた、神への悲痛なまでの問いかけだ。語り手でもある主人公は斜視として描かれるが、そのことが彼と世界との間に違和をもたらしていた。こうした違和のあり方は三島の『金閣寺』にも大江の『飼育』にも見られ、作品個々の違いを超えた同時代としての共通項が浮かび上がってくる。また、この頃の遠藤周作は『天国と地獄』の山崎努を見るようで実に瑞々しい。
2014/02/15
kaizen@名古屋de朝活読書会
芥川賞】悪事を働く理由の一端を母親の所為にする主人公。主な舞台はフランス。一瞬、カミュの異邦人の焼き直しかとも思った。ナチスドイツとの戦争を悪趣味に描く。日本的感覚がどこに残っているのだろうか。ある意味恐い。赦しが理解できていない。
2014/10/08
遥かなる想い
遠藤周作の芥川賞受賞作。初期の作品から宗教・裏切り・罪がテーマになっている。やはり遠藤周作の原点なのだろう。「白い人」フランス人でありながら、ナチの手先になり、友が拷問をうけるのを目にしながら悪魔的な行動をとる..遠藤周作の原点がここにある。
zero1
戦争を背景に、人の本質と信仰を描いた二作品。ノーベル賞候補と言われた遠藤の芥川賞受賞作。「白い人」はドイツ軍に協力したフランス人が主人公。サディズムは隠された本能なのか?「黄色い人」は医学生、罪深い千葉の手紙が人間の醜悪さを描く。背教者デュランは「沈黙」に通じる人物。人種の違いで何が違う?解説は山本健吉。人の黒い部分は神の不在がなければ描けないのか。私もそこが疑問だ。「海と毒薬」と同じテーマなので、遠藤の世界を知る一冊。日本人の精神的な拠り所とは何?彼自身は確固とした答えはなく、読者に問いかけている?
2019/05/30
かみぶくろ
人生において宗教に縁のない自分には、どこか遠い読書だった。作中、白い人たちはろくでもないことばかりして、そのくせその罪をウジウジと悔いたり、逆に悪に陶酔して逃げたりしているわけだが、その悩み方、行動はどことなくビビットだ。一方、われらが黄色い人たちは、罪の観念が一向に分からず、ゆえにさほどの後悔もなく、ただ「ふかい疲れ」と濁った目を携えて横たわっている。背景に戦争を置いているのでどちらも極めて醜悪に描かれているが、そしてあまりに図式的な比較だとも思うが、言いたいことは分からんでもなかった。
2016/06/27
感想・レビューをもっと見る