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悲しみの歌 (新潮文庫)

悲しみの歌 (新潮文庫)

悲しみの歌 (新潮文庫)

作家
遠藤周作
出版社
新潮社
発売日
1981-06-29
ISBN
9784101123141
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悲しみの歌 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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優希

人の弱さ、悲しみといった感情が見せられたような気がします。戦犯となった過去を持つ「罪人」勝呂こそが真実として存在している。様々な人が登場しますが、皆が虚無のように見えました。その中で、愛することしか見えないお人好しのガストンが降臨してきたキリストのように思えます。彼は誰一人として救えたわけではないけれど、純粋に愛を求めるその姿が神に最も近い者として遣わされたのではないかと思います。正義の顔や優しい顔を見せるのは容易なこと。でも、誰よりも罪と悲しみを知っていることこそが本当の生きる意味のように感じました。

2016/08/29

(C17H26O4)

勝呂は黒い海を抱えて生きてきたのだろう。黒い波に流され生体解剖に助手として参加して以来。己の良心は、罪の意識は。身を隠すようにして開業する医院で行う堕胎手術に対する慚愧の念は。容易く割り切ることのできない正義と不義。善と悪。表と裏。若い新聞記者は執拗に過去を暴き、今を暴き、世間は無情に勝呂を裁く。苦しむ老人の願いを叶えたことは罪か。ガストンの無限の優しさと愛にも、勝呂の見る黒い海の色はついに変わることはなかったのか。人間の弱さや不条理を全て受け入れ赦そうとするガストンは、だが、読者にとって救いでありうる。

2019/07/28

GAKU

「海と毒薬」から20年程経過してから書かれた作品。あの「生体実験」の末端の助手を務めた、勝呂の後日譚といえる作品。ただ読み進めていくうちにこの作品の本当の主人公は誰か?という疑問が沸き起こった。読み終わってから主人公は外国人でお人好しのヒッピー、ガストンではないのかと感じた。彼はまさしく新宿に降臨したキリストでしょう。しかし彼の行為は余りにも滑稽で、結局誰も救う事が出来ない。ある意味この作品は「海と毒薬」以上に悲しく、救いようのない作品ではないか?⇒

2016/08/14

アン

『海と毒薬』の後日譚。読後感は重く、人生の折り返し地点を過ぎた今、悲しみの感情がふつふつと湧いてきます。勝呂の罪と罰を背負った心情の変化、ガストンにキリストを重ね、人々に無償の愛情を捧げる姿を見事に描き出していると思います。

2018/10/16

ω

まさに、外で霧雨が降っているような小説だった(;_;) ずっと晴れることはないような、人間の悲しみ。 海と毒薬の医師、勝呂が登場します。あれから30年……。若さ絶頂期で勢いのある新聞記者には決して分からないことは、本当にあるよな。人間は不倖になるために生まれてくるようなもんだもの。脱帽!

2023/03/19

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