イエスの生涯 (新潮文庫)
イエスの生涯 (新潮文庫) / 感想・レビュー
遥かなる想い
遠藤周作がイエスを無力であわれな人間として描いた本書は私には新鮮だった。世に伝えられる奇蹟を起こす伝道師ではなく、自ら信者と一緒に悩むという観点は遠藤周作のキリスト関係の小説に一貫して流れる軸である。イエスの生涯を通して、当時のユダヤ・ローマ等の時代背景なども読者に伝わってきてよい読書をしたという記憶がある。
Die-Go
遠藤周作祭り第4弾。筆者なりのキリスト・イエスの受難の解釈。それに共感できるかどうかは別として、途中読みにくい所がありつつも最後の数ページは息をつかせぬ勢いで読ませる力があった。人として生き、人として死んでいったイエスの心中の迷いや苦しみを、これでもかと畳み掛けてくる筆者の思いは圧巻。イースター前に読み終えられて良かった。★★★★☆
2016/03/18
青蓮
遠藤周作の大胆な解釈を混じえて書かれたイエス伝。キリスト教徒ではないので殆ど触れたことがないジャンル故、理解が難しいかな?と不安でしたが、思ったよりも易しく書かれていて興味深く読むことができました。イエス・キリストと言うと数々の奇蹟を起こした超人的な存在だと思いますが、ここで書かれているイエス・キリストはそうではなく、ただひたすらに弱者に寄り添い愛に殉じた人物という新たな面が見えてます。イエスを裏切ったユダについてもよく描かれていて(遠藤氏の推測でも)何故彼が裏切り者になったのかすっきり理解できました。
2018/02/17
優希
イエス・キリストの解釈を豊かにしてくれる1冊だと思いました。新約聖書の文字上では到底理解できないイエス像。その奥には愛と受容の希望がありながらも、その本質は知られないままになっていることが多いのではないでしょうか。英雄でもなければ美しくもない、誤解と嘲りの中での受難と十字架は何故惨めで醜くなければならなかったのか、何故十字架にかからなければならなかったのか。カトリック作家ならではの苦しみの中にあるからこそその本質に突き詰められたのでしょう。姉妹編である『キリストの誕生』も読みます。
2016/09/20
gtn
弟子の覚醒と振舞の物語として読む。弟子の裏切りによって生贄にされた師。しかし、後悔と自己嫌悪と師の怨みがあろうことに苛まれる弟子に最期に与えられた「主よ、彼らを許したまえ」との言葉に慟哭し、師を理解し、師の心のとおり生きていくことを誓願する。本書には触れられていないが使命に生きるならば死しても魂が永遠に救われるとの「喜び」もあったのではないか。その後このわずかな弟子達が死を賭して弘教したからこそ、世界宗教としての今がある。
2020/05/19
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