キリストの誕生 (新潮文庫)
キリストの誕生 (新潮文庫) / 感想・レビュー
優希
十字架上で無力に死んでいったイエスはいかにしてキリストとなっていったかが語られていました。愛にのみその生涯を捧げたイエス。死後、信徒と帰られた使徒たちにより「キリスト」と呼ばれ始める。現実として死んだイエスは復活によりキリストという新たな命を与えられたように思います。小説家という立場とカトリックという立場によって聖書が読み込まれ、使徒たちの心の軌跡と共に描くことで、浮き彫りになるキリスト像。人として死んだからこそキリストとして永遠の同伴者が生まれたといえるでしょう。
2016/09/20
Die-Go
遠藤周作祭り第5弾。「イエスの生涯」においてあまりに無力な人の子として、無惨に死刑にあったイエスがなぜキリストとして崇められるようになっていったのかを、その弟子達のイエスの死後の歩みを振り返って読み解く。遠藤周作なりの解釈ではあるが、そこには一本の筋が通っているように感じた。★★★★☆
2016/03/21
molysk
十字架に架けられてその生涯を閉じたイエスは、どのように「救い主(キリスト)」としての誕生を遂げたのか。残されたペトロらの弟子たちは、裏切った自分たちを最後まで愛し続けたイエスに心打たれ、その復活を信じるようになる。原始キリスト教会の活動は、まずユダヤ教の一派として始まった。やがてポーロらが異邦人へも布教を行うようになり、民族を超えて広がっていく。ユダヤ民族を護る「裁きの神」から、すべての民族を救う「愛の神」へと変わっていったのだ。キリスト教の発展をもたらしたのは、弟子たちのはたらきと、イエスの愛であった。
2023/06/03
GAKU
「イエスの生涯」の続編。十字架の磔で死んだイエスがそのあと復活して人々の中に永遠に生きていく経過が、遠藤周作氏の捉え方で描かれている。そして最後は「なぜこんな無力だった男が皆から忘れ去られなかったのか。なぜこんな犬のように殺された男が信仰の対象となり、人々の生き方を変える事ができたのか。このイエスのふしぎさは、どれほど我々が合理的に解釈しようとしても解決できぬ神秘を持っている。」と結ばれています。⇒
2016/09/14
mj
20年強ぶりの再読。本編251頁のうち70頁あまりしか読み返せなかったことを白状したうえでのレビュー。原始キリスト教団についてのお話。小説家としての自由を大いに活かして、データの揃わないところにおいても、想像力を活発に発揮されています。小説本として評価が高いと聞いています。名作の誉れ高いと。いいことばかり書いてはレビューになりませんので、潜在的にもしかしたらなり得るかもしれないと勝手に感じた短所にも少し触れます。イエスが無力、みじめに死んでいった、犬のように殺されていったと書かれています。
2017/12/16
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